<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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久しぶりに沢木耕太郎の文庫を買い求めた。

「246」

タイトルだけ読んだら、なんじゃこれ?
というような表紙だったが、これは1980年代の後半に雑誌「SWITCH」に連載された日記エッセイをまとめたものだった。
タイトルは作者の自宅と職場の事務所を結ぶ国道246号線からとったもの。
内容は沢木ファンなら「おおおーそうか」というようなもので、例えば「深夜特急」の第二便の発刊を控えてその作業に追われる光景や、初めての小説「血の味」の執筆開始のエピソードなどが欠かれていて、これまでの作品とリンクして楽しめる内容だった。

中でも最も興味を惹き、面白かったのが娘に聞かせたお話の数々。
当時2~3歳だった作者の娘さんを寝かしつける時にするお話がひとつひとつの物語になっていて楽しめる。
「おとーしゃん、〇〇のお話しして」
とせがまれると、娘がお願いした題材を使って、即興で物語を作り出す。
その光景がなかなか良い。
沢木耕太郎というノンフィクションライターが語る子供向けおとぎ話とは、これってすごく贅沢ではないか、と思ったりしたのであった。
これは作家の子供のみが持つ特権かもしれないな、とちょっとばかり羨ましく思った。

私は子供の頃、母によく子供向けの本を読んでもらったものだ。
最もお気に入りが「野口英世」の伝記で、このことはよく覚えているのだが、その人生を黄熱病の研究に捧げ、ついには自身も帰らぬ人となる姿に幼い私は大きく感銘を受け、
「大きくなったらお医者さんになりたい!」
と宣言していたものだ。

ま、現実は厳しかった。

ということで、今年最後の読書は沢木耕太郎。
気軽に読める「246」であった。







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