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正義とは何か?
よくよく考えてみると「正義」ほど、その実態を知ることが難しいものはない。
「正義」はそれを定義する者の位置によって意味合いが異なるからだ。

冷戦時代、私たち日本や欧米の自由主義は、共産ソ連や中国にとっては「正義」ではなかった。また、共産主義は私たちにとって正義ではなかった。
ベトナム戦争は南北ベトナム双方の正義に基づいて展開されたが、ベトナム側、アメリカ側双方に正義があり、そのどちらの正義が正しいものであったのかは、後世の歴史でしか評価することはできなかった。
中国の大躍進政策も毛沢東の指揮のもとに展開されたが、その結果数千万人の人民が死ぬことになった。
その大殺戮運動であった大躍進も当時の中国にとっては正義なのであった。

ともかく、このように難しい話では分かりにくいので、簡単に言ってしまえば、ブラゼルや城島をはじめとするタイガースの選手たちのホームランやファインプレーは阪神ファンにとっての「正義」に違いない。が、ジャイアンツファンにとっては「正義」ではない。
サンスポの正義と、報知新聞の正義は大きくことなっており、最も分かりやすい例と言えるだろう。

NHK教育テレビで日曜夕方に放送されていたハーバード大学の政治哲学の講義は、見ているだけで興奮し、思わずテレビに向かって突っ込んでしまっていた。
テレビにつっこむなんてことは阪神戦以外には「連想ゲーム」以来数十年ぶりの出来事であった。

その白熱した大学講義を展開したのがマイケル・サンデル教授。
「これらか『正義』の話をしよう」(早川書房)
はそのサンデル教授の著書で、内容もテレビほどではないものの、白熱しており、なかなか面白いものであった。

ハリケーン被害での物価の不当な高騰が、本当に不当であるのかどうか、というような事例から、本書は始まっている。
冒頭からいきなり突っ込みたくなる。
アメリカ人と日本人の価値観の違いが、すでにその部分から展開され、アメリカ人の著者であるサンデル先生の論調にあれこれと口を挟んでしまうのだ。

べらぼうなボーナスを受け取っていたアメリカの金融ビジネスマンへの非難も同様で、これもまたバブルに踊った経験のある日本人には、思わず突っ込みたくなる内容だった。

楽しく考え、読みながら頭脳の中で議論する。
そんな素晴らしい一冊で、本を読んだら必ず突っ込みたくなる人には超おすすめなのであった。

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