昨日は中上健次の小説を原作とした、若松孝二監督の遺作「千年の愉楽」を観た
1963年にピンク映画「甘い罠」で映画監督デビューした若松孝二監督。「ピンク映画の黒澤明」と言われたりもしたとのことだ。その後19650に年、若松プロダクションを設立。「反体制的な主張を込めた作品を数多く発表し、学生運動の高まりとあいまって若者の支持を得た」。
その若松孝二監督とは、あまりにも突然の別れとなった。若松監督は昨年、タクシーにはねられ頭と腰を強く打って、その後亡くなられた。その遺作は、中上健次の小説を映画化した「千年の愉楽」だ。昨日観た。
中上健次が生まれ暮らした“路地”と呼ばれる地域は、被差別の人たちが居住する閉ざされた場所だった。原作はその“路地”を舞台にしている。そして、主人公の若者たちはそれぞれに個性的だが、みんな反道徳的で、最後には自殺をしたり、若死にしていく。仕事や女に喜びを見出しつつも、次第に鬱積してゆく内なるエネルギーを小説は描いている。
そんな中上健次の小説世界が、どのように映像化されているか、楽しみに見に行った。原作は激しい性描写に溢れているが、映画ではいつもの若松監督作品のような激しい性描写なく、原作と同じように母親より先に子どもを抱いたオリュウノオバという産婆が語り部となり展開していく。その寺島しのぶが何とも魅力的だ。そして、イケメンの三人の男優が、鬱屈したエネルギーをため込み爆発させていた。
若松孝二監督は享年76歳だった。もう少し生きていて、社会と向き合って人間を抉り出して欲しかった。映画「千年の愉楽」の上映会場であるシネマクレールでは、監督を追悼して写真展が開催されていた。改めて、ご冥福をお祈りする。
今日は「VSCOを支援する会」の決算監査、犯罪被害者支援は喫緊の課題だ
私はお仕事として、つまり額は別として報酬をいただいている法人の監事のお役以外に、ボランティア-つまり無報酬の監事のお役を3つ引き受けている。その内の一つが、「VSCO(公益社団法人被害者サポートセンターおかやま)を支援する会」だ。
今日はその総会を前にして、決算監査をした。会は文字通り「VSCOを支援する」のが目的であり、これまでの支援活動の中心は財政-つまり寄付だ。しかしその額たるや微々たるもので、もう少し何とかならないかという思いだ。もう一人の監事であるAMDA菅波理事長は、「支援する会」の厳しい財政活動の実情を踏まえてカンパもしていただいた。
さて、支援をしている「VSCO」は、5月11日(土)に、「犯罪被害者支援を考える市民の集い -犯罪被害者の声を聴いてください-」を開催する。内容は殺人放火事件被害者遺族 大崎利章さんの講演、シンポジウム「『被害者支援の10年』と今後の展望」、そしてPANSAKU(一人は性犯罪被害者)のライブ&トーク、だ。
今、犯罪が増え続けており、その被害者支援はまさに喫緊の課題となっている。この「市民の集い」に参加して、「犯罪被害者支援」について考えてみていただければ幸いである。
東日本大震災で亡くなられた方の復元に尽力された納棺師・笹原瑠衣子さん
昨日から少しだけ寒くなった。気温の変化の激しさに体調管理にいささか苦労するし、何よりお野菜づくりをしているので大変だ。と言っても、心配して眺めているだけなのだが。
さて、2008年に公開された映画「おくりびと」は「遺体を棺に納める“納棺師”という職業を通して、様々な死と向き合い人生をみつめるヒューマンドラマ」で、第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞を始めとして映画賞各賞を総なめにした。以来、「納棺師」の仕事は注目を浴びるようになった。
その納棺師である笹原瑠衣子さんの二冊の著書『おもかげ復元師』『おもかげ復元師の震災絵日記』(どちらもポプラ社刊)は既に読んでいた。今回の今西乃子著『心のおくりびと 東日本大震災 復元納棺師 ~思い出が動き出す日~』(金の星社刊)は、その笹原瑠衣子さんの東日本大震災での活動をルポしている。
ご本人ではなくルポライターが書くことで、ある意味とても読みやすくというか、読ませるように書かれている。笹原瑠衣子さんの二冊の著書と同様に、やはり涙なしには読めなかった。
東日本大震災では、たくさんのとても被災者の方々は深刻な被害に遭遇されており、その一方ではたくさんの心温まる活動があり、それだけにエピソードもたくさんある。その一つが、納棺師・笹原瑠衣子さんのご活躍だ。本を読むという行為は、心を豊かにしてくれる。