全英連参加者のブログ

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竜とそばかすの姫

2021-07-22 04:00:00 | 全英連参加者 2021

 高知の自然豊かな村に住む17歳の女子高生・すずは幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らし。母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったすずはその死をきっかけに歌うことができなくなっていた。いつの間にか父との関係にも溝が生まれ現実の世界に心を閉ざすようになっていく。

 曲を作ることだけが生きる糧となっていたある日偶然にも、全世界で50億人以上が集う超巨大インターネット空間の仮想世界<U>に「ベル」というキャラクターで参加することになる。もうひとりの自分。もうひとつの現実。もう、世界はひとりひとつじゃない。<U>では自然と歌うことができたすず(ベル)は自ら作った歌を披露し続けていく内にあっという間に世界中の人気者になっていく。そんな驚きも束の間突如轟音とともにベルの前に現れたのは竜の姿をした謎の存在だった...

 最初にポスターを見た瞬間から、なんとなく美女と野獣かなと感じていた。
 次に主人公のすずの<U>での姿であるベルの雰囲気に、不思議なdeja vuを覚えた。見たことのある感じの顔と思いながら、ここ数ヶ月間公開を待っていた。


 オリジン
 仮想空間でのアバターの持ち主を、このものがたりの世界では「オリジン」と呼び習わしている。確かに「発信者」「正体」というよりは、ずっといいと思う。

 仮想空間の描き方
 劇場で見たものとしては、「Ready Player One」、「シュガー・ラッシュ:オンライン」が描くネット世界がある。前者のオアシスはオンラインゲーム、後者はアーケードゲームのキャラクターたちが生きる世界である。本作の<U>は、「交流サイト」的なものに見えた。ベルが受ける賞賛、その代償として彼女に向けられる注目、誹謗中傷。このあたりは<U>が現実世界を写している。

 仮想空間への入り方
 生体情報を読み込んでアバターができあがり、目の感覚、手足の感覚がアバターに移行する。没入感の描き方が印象的。ゴーグルをかけないところがいい。


 ものがたり全般の感想
 竜のオリジンとベルのオリジンのすず。2人の置かれた立場、普段の姿がカギになることは、割と早く気がついた。
 現実世界のすずは、1人では背負いきれないような絶望と、喪失感に苛まれている。大好きだった歌を歌うことも出来ない。竜は<U>の世界の平和、平穏を乱す粗暴な存在。2人とも現実世界とは真逆。現実世界の2人は、ともにつらい立場である。ものがたりは2人の心の解放、新しい未来への一歩を描いている。
 ・・・かな?


 すず/ベル Starring 中村佳穂(なかむら・かほ)
 全く知らないアーティスト。全国レベル、一般レベルでは、もうしわけないがほぼ無名の存在だろう。
 歌手としての中村さん、ベルとして歌う楽曲では、「はなればなれの君へ Part1」のできばえがすごいと思う。母親を亡くしてから現実世界に心を閉ざし、大好きだった歌が歌えない。そんなすずの心情をよく表している。
 すずのCVとしては、正直よくわからない。プロフェッショナル然としていないことを、監督が求めたのならば、その通りかと思う。

 しのぶくん Starring 成田凌
 すずの幼馴染み。バスケ部所属。女子から絶大な人気がある。
 事前に成田さんが出演しているのを知っていた。いそうだな、こんな生徒と感じた。

 すずの父親 Starring 役所広司
 妻を亡くし、娘との距離が掴めずにいる。娘の幸せを願い、必死に生きているお父さんである。


 サイエンスフィクションであり、ファンタジー要素もある。形式はともかく、細田監督が描くことをめざしたのは、家族、小さな集団の再生なのかなと思う。

 ものがたりの最後でも、竜のオリジンにはまだ戦いが続くことが予見できる。願わくば彼にも平穏な日々がおとずれるように。彼のように苦難に直面している人に光明がさすように。そんな思い、メッセージが込められている。
 ・・・と思う。

 どうでもいいことなのだが、ベルのdéjà vuが終映後にわかった。どの作品か限定できないのだが、小松菜奈さんである。

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