身寄りのない少女・小川たまえ(のん)は交通事故に遭い臨死状態となり、「もう一度現世に戻って生きる」か「天へと旅立つ」かを自ら決断できるようになるまで、天空の町・三ツ瀬にある旅館「天間荘」で暮らすことになる。彼女は、腹違いの二人の姉・天間のぞみ(大島優子)とかなえ(門脇麦)に初めて出会う。姉たちや周囲の人々と触れ合い、家族の愛情や友情を知り成長していくたまえ。
ある日、三ツ瀬の町とそこの住人にまつわる秘密を知る。
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のんさん主演作品は「Ribbon」以来2作目だ。大島優子さん、門脇麦さんの組み合わせがおもしろそう。基本的にはファンタジーかな。
・・・と、考えての鑑賞。
でもそんなものではなかった。
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大女将・天間恵子(寺島しのぶ)
天間荘の大女将、自分とのぞみ、たまえを捨て、夫は別の女のところへ出ていった。自分が経営をしている天間荘、元夫が生ませた子ども、たまえが来る。かなりのストレスである。
のぞみ、たまえとも、いろいろギスギスしている。
本来であれば「現世に戻る」「天へ旅立つ」を選ぶ間は客として宿泊するたまえを、仲居として働かせる。
財前玲子(三田佳子)
孤独な女性、現世では目の病気で盲目。天間荘に滞在。たまえが仲居として接客する。始めは気むずかしく、扱いにくい客。しかしたまえと交流することで、少しずつ自分の過去(生前)をふりかえりながら変化していく。
芹崎優那(山谷花純)
自殺未遂をした。たまえとの交流から「現世」か「天に」か深く考えることになる。
この3人が、三姉妹、その他の三ツ瀬の人々の運命を左右する。
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原作を知らずに鑑賞したので、途中で「ああ、これは3.11」のお話しなのだと気がついた。奪われた多くの命、理不尽な最後を遂げた人々の魂は... そんな視点で見ると、現実の三ツ瀬に生きる人々と、天空の町の三ツ瀬で過ごす人々の交流がわかるし、切ないものになる。
最終的な財前、芹崎、たまえの選択は。三ツ瀬という場所、三ツ瀬の人々はどうしてそこにいるのか、そしてどうなるのかは書かないことにする。
でも、終映後何だかホッとした。
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三田さん、存在感がすごい。
最初にスクリーンに出てきたシーン、たまえとの交流から徐々に変化するシーン、ラスト。。。徐々にかわるところ、存在感。迫力。
昔から知っている女優さん。TVでもたくさん見ている。でも、映画館できっちり見たことはほとんどない。この人が財前としてスクリーンに現れると、ものがたり全体がカチッとした気がする。
”狂気”を帯びた大女将役・寺島しのぶさん。
彼女の年代で、この大女将役をできる人=あえて引き受けられる人=あまりいない感じがした。
周りにきつくあたり怒気を全開する。夫に捨てられ、虚勢をはらなければ自分がつぶれてしまうと恐れている。なかなかの大変な役だろう。
三田さん81歳、寺島さん49歳。2人ともすごい女優さんである。
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終映後、のんさんを見るために鑑賞したことを思いだした。もちろん彼女の影が薄いとか、大島さん、門脇さんに”押された”わけではない。彼女の演じるたまえが”動く”と、周りの誰かが動く。そういう立ち位置の主役を、のんさんが演じていると、あまり主役主役しないということだろう。
3.11をモチーフ(ものがたりの枠組)にすることは、まだまだ、何か憚られる気がする。そんな思いがある。
本作は4月に鑑賞した「やがて海へと届く」と同じく、多くの人々があの日、命を奪われたことの理不尽さ、怖ろしさを描いている。そのことを通して、忘れないということの大切さを静かに訴え、伝える作品だと思う。
文中一部敬称略