全英連参加者のブログ

全英連参加者の、言葉やその他諸々についての雑感... 不定期更新です。

HUMAN LOST 人間失格

2019-12-07 04:00:00 | 全英連参加者 2019
HUMAN LOST ポスタービジュアル  医療革命後の昭和111年の東京。人間は体内の“ナノマシン”とその管理を請け負う“ネットワーク”が管理する“S.H.E.L.L.”体制に支配されていた。その結果、病気にならず、傷の治療もいらず、120歳の寿命が保障されるが、その極端な社会制度によって経済格差を含むさまざまな問題が起こっていた。(MOVIX作品紹介)
 昭和111年/GDP世界1位/年金1億円支給/120歳寿命保障 日本文学の最高峰「人間失格」、狂気のSF・ダークヒーローアクションへ――(公式サイト)

 昭和111年は存在しない。昭和11年が1936年、100を加えると2036年だから、17年後の世界が舞台と言うことになる。ただし、「四大医療革命から半世紀」らしいので、体制スタートは1986年になる。パラレルワールドのものがたりだ。
 作品紹介から連想するのは、伊藤計劃の「ハーモニー」である。高度な医療経済社会が築かれている未来。社会の構成員は公共のリソースとみなされ、社会のために健康・幸福であることを求められる。WatchMeというナノマシンが、健康を恒常的に体内監視するシステムが存在している。
 ハーモニーではWatchMeのシステムから離れた世界が存在する。昭和111年の東京にも大気汚染と貧困の広がる環状16号線外アウトサイド特権階級が住まう環状7号線内インサイドという場所がある。環状16号線は(おそらく)国道16号線である。本作も「太陽」や「エリジウム」で描き出されたユートピアとディストピアの対比、何をどうがんばろうとも、何も変わらないような絶対差をきっちり描き出している。MOVIXの作品紹介を読み、作品ウェブサイトを見ると、細かいことは違うようだが、そんな風に思えた。
 公開2日目の11月30日見に出かけた。

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 見おわって感じたこと。
 SF作品として~正直な感想を書くと~統一感のようなものがないように思えた。
 見る前に考えた「ハーモニー」のような、社会システムに強いられているとはいえ、明るい未来はそこにはなかった。1日19時間という長時間労働に支えられた経済発展、防塵マスクをして歩く人々。疲労に支配されている人々。そんな社会でS.H.E.L.L.体制から外れると、「ロスト化」して怪物になる。このあたりから少々雰囲気が変化した。僕はロスト化は社会システムからの離脱であり、普通の人間(120歳の寿命が保障されない人間)になることだと考えていた。全く違った。
 ロスト化した元人間は、子どものことテレビで見た「デビルマン」のデーモンのように見えた。

 絵があの映画に似すぎている。
 本作はポリゴン・ピクチュアズによる。同社はアニメの「ゴジラ三部作」の製作会社である。ここまで主人公の顔、雰囲気が似過ぎているとよろしくない。

 見に行く前に考えていた本作の世界観は「ハーモニー」でも「太陽」でも「エリジウム」でもなかった。
 じゃあ何かというと、攻殻機動隊でもない。ラスト近くに登場するものは、まさに巨大怪獣だ。主人公の心の闇はエヴァのようにも見えた。全体的にいろいろな先行作品の何かが見え隠れしてしまう。そんな作品でした。


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