tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

三島由紀夫が観たインド

2017-04-07 23:49:39 | プチ放浪 都会編

輪廻転生の物語である三島の遺作「豊饒の海」4部作の第3部「暁の寺」。三島由紀夫は、物語の主人公・本多の眼を通して、自身が観たインド・ベナレスの情景を描いている。

「さるにても、ベナレスは神聖が極まると共に、汚穢も極まった町だった。日がわずかに軒端に挿し込む細径の両側には、揚物や菓子を売る店、星占いの家、穀粉を秤売りする店などが立ち並び、悪臭と湿気と病気が充ちていた。ここを通りすぎて川に臨む石畳の広場に出ると、全国から巡礼に来て、死を待つあいだ乞食をしている癩者の群れが、両側に列をなしてうずくまっていた。たくさんの鳩。午後五時の灼熱の空。乞食の前のブリキ缶には数枚の銅貨が底に貼りついているだけで、片目は赤くつぶれた癩者は、指を失った手を、剪定されたあとの桑の木のように夕空へ手をさしのべていた」

「ベナレス。それは華麗なほど醜い一枚の絨毯だった。千五百の寺院、朱色の柱にありとあらゆる性交の体位を黒檀の浮彫りであらわした愛の寺院、ひねもす読経の声も高くひたすらに死を待っている寡婦たちの家、住む人、訪なう人、死んでゆく人、死んだ人たち、瘡だらけの子供たち、母親の乳房にすがりながら死んでいる子供たち、・・・・・これらの寺院や人々によって、日を夜に継いで、嬉々として天空へ掲げられている一枚の騒がしい絨毯だった」
三島由紀夫「豊饒の海(三)暁の寺」より

時代も変わったのだろうか。今のアグラ、ジャイプール、そして、ニューデリーはさほどひどくはない。インドの生活は確実に向上しつつあるように思える。


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