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tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

チョコレートムースじゃなくて

2017-01-17 22:32:49 | プチ放浪 山道編

シアトルの大都会の夜景。それを過ぎると飛行機の窓から見えるのは、闇に沈むツンドラの黒々とした地表だ。数時間、アラスカの夜を飛び続ける。運が良ければ飛行機の窓からノーザンライツの怪しい光の舞が見られるそう。
窓に顔をつけて眼下を見下ろしていると、凍てついた山々や氷河の陰影がおぼろげに浮かび上がり、そんな原野の中に時折ポツンとかすかな明かりが見える。
あの灯りのところでは、だれかが暖かい暮らしをしている。
この土地に絵葉書のような景色はない。見栄えのしない灌木がぽつんとあり、秋には紅葉するであろう地衣類や蘚苔類の上を雪が埋めているだけだ。ぼくはこんな景色が好きだ。

フェアバンクス市内を抜け、アラスカ2号線に入ってチナ温泉を目指すダッチバンの中で、ドライバーのボブがフロントガラスに広がる荒野をを指差し、この辺でムースをよく見るんだと言う。
ムースとはヘラジカ。北アメリカでムース(moose)と呼ぶ。体長240-310cm。肩高140-230cm。体重200-825kg。シカ科最大種。オスは名前のとおり、ヘラのような角をもつ。体が大きいだけでなく、ウシのように太い首と大きな胴体、ラクダのように長い顔、ロバのような長い耳をもつ、変わった姿のシカだ。足はほっそりと長いので、ウマのようにも見える。
宿泊したロッジの女主人のコリーンも、開口一番にムースには気を付けてと言うほどアラスカ住人とは身近な存在の野生動物だ。牝鹿が子鹿を守ろうとする冬から春は、クマよりも危険な動物だ。

ヘラジカは見かけほど大人しくはない。米疾病対策センターは、鹿やオオツノジカやヘラジカのような野生哺乳類の攻撃による死亡事故は毎年約50件発生していると見積もっている。これに動物との自動車衝突事故を加えると、死亡事故件数は一気に200件以上に跳ね上がり、物的損害は11億ドルに上る。
特に、子連れのムースは危険だ。牝鹿は子鹿を守るためなら一切を顧みない。
コリーンも、ロッジに帰る途中にムースを見かけたら、わざわざ遠回りしてでもムースを避けると言っていた。野生動物との遭遇による事故は予防が大切だ。ヘラジカや鹿の匂いのするムスクのオーデコロンなどもってものほか。

ちなみに、ムースに遭遇したときの対処法。ムースの態度や耳の位置が変化したり、脚を踏み鳴らして怒り出したりしたら、ゆっくりと後退して逃げること。
じわじわ後退しながらムースに向かって大声で叫び、大きな音を立てておどす。野生動物には背を向けてはいけない。もし前足の蹴りでノックアウトされたら、頭を覆って出来るだけじっとしているのがいい。相手が動かないことを確認すると、ムースは離れていくそうだ。

ムースは道路に飛び出し交通事故を起こす。体重が700㎏にもおよぶ大型なためにしばしば深刻な人身事故につながる。衝突すると車のバンパーが当たった衝撃で脚が折れ、巨大な胴体が上方から運転席を押しつぶす。

交通事故で死んだムースは、食肉として利用されるらしい。事故が起これば、事前に登録した引き取り希望リスト順にしたがって、警察から電話が来る。事故はムースが目視しずらい夜間に起こることが多く、また、その身体は巨体。1トンのピックアップトラックで引き取りに行くとして、どうやって道路わきのその巨体を持ち上げるんだろう?
やぱ、チェーンブロックとか使うんだろうか。あるいは10人ぐらいの総出でトラックの荷台に積み込むとか。ジビエの肉をただでもらえるとしても、その入手はハードルが高そう。。

「南部の木には奇妙な果実がなる/飛び出した眼 苦痛に歪む口/太陽に腐り 落ちていく果実/奇妙で悲惨な果実」(「奇妙な果実」ビリー・ホリデイ)



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