以前書いた記事だ
http://pub.ne.jp/tetujin/?entry_id=1858277
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ぼくがダイビングに夢中になってた頃の話だ。もう、20年も前。ちょうど、バブル景気時代に公開された『ホイチョイ3部作』の第2作、原田知世主演の映画『彼女が水着に着替えたら』の前の年あたりのことだったと思う。バブル経済に浮かれ、若者の海外でのリゾートダイビングは当たり前のこととなっていた。
ぼくは機材のセットを終え、そろそろ5mmのツーピースでは限界を感じてきた11月の伊豆海洋公園の石浜に座って、ダイビングツアーのメンバーとその日の一本目のダイビングを待っていた。
そのときぼくの横には、同じようにツーピースのウェットスーツを着た白髪のシニアの方がいた。その日、ぼくのバディをしてくれた方だった。当時、シニアの初心者ダイバーって珍しかった。ダイバーと言えば、ぼくのように、はでな色のウェットスーツを着たアドバンスに挑戦中の生意気な若者ダイバーか、真っ黒のプロ仕様のウェットスーツを着た年配のインストラクターかのどちらかだった。
「城ヶ崎海岸(伊豆海洋公園)は、冬がきれいだね」
とぼくに話しかけてきたその方。
「そうですね!!」
ぼくがそう応えると、こんな話を聞かせてくれた。
「私は前はそんなにダイビングに興味はなかったんだ。でもうちのカミさんが大好きでね・・・・・・伊豆の海に潜っては、サカナの写真を撮るのがとても好きだったんだ。
良く撮れたものを家に飾るんです。ある日カミさんにどうしてもと言われ、2人でここに来たんです。体験で潜るためにね。潜ってからやみつきになってね・・・・・・オープンウォーターのライセンスを取って、時には2人で海外へ潜りに行ったりしたんですよ。
でもカミさん・・・・・・(ガンで)亡くなってしまってね・・・・・・。今日は3年ぶりに潜りに来たんですよ。上手くはないんだけど、こうしてカミさんの使っていたニコノスも持ってね。良く撮れた写真を仏前に飾ってあげるつもりなんですよ」
その方は笑顔で話してたけどぼくは涙を堪えるのに必死だった。素晴らしい夫婦愛の話と、楽しそうにサカナを追っかけていたその方の笑顔は忘れられない。奥さんが隣で笑ってるように感じていた。
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そのブランクダイバーから届いた一枚のクリスマスカード。カードには、恐ろしくピンボケした水中写真と、その片隅には、見覚えのあるウェットスーツが写っていた。
当時、写真を印刷できるプリンターなどはなく、写真を使ったカードはすべて写真印刷。最低でも数十枚は注文しなければならないから、たぶん、そのピンボケ写真がベストショットだったのだろう。
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その翌年の夏、ぼくは彼と連絡を取り合って、再び伊豆の海に一緒に潜って彼の話を聞いた。
特別なことはしなかったという5回忌が過ぎたある日、バスに乗って帰る途中、何の気なしに窓から外を眺めてたら、女性が目に入り、その格好を見て彼の奥さんがあんな服の色が好きだった事を思い出したらしい。
いきなり彼の目から涙があふれ出てきて止まらなくなってしまったとのこと。
「家に帰っても独りでずっと泣きつづけてしまいました。
初めて声を上げてしまいました」
・・・きっと、彼の奥さんが会いにきたんだろうなあ。。長文スマソ。
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