あらぬ声がもれ響いていた。
アパートの階下の部屋でだ。
ぼくは睡眠が深い方で、一度、寝てしまうと、少々のことでは起きない。
だが、こんな熱帯夜の夜はさすがに眠りが浅い。夜中に目が覚めてしまうことがある。
安普請のアパートの階下の情事を声を聞いたのは、そんな夜だった。
階下の住人は30前の女性。昔は男女ともに適齢期というものがあったが、今は、バツイチも含め、独身生活を楽しんでいる単身者が、こうしたアパートに住みついて人生を謳歌している。
このアパートに引っ越してから半年たつが、階下の住民と顔を合わせたのは2度だけ。
一度は、アパートに引っ越したその日に、挨拶品を持って挨拶に行った時だ。
そして、もう一度は、偶然に乗り合わせた電車でのこと。
目があった瞬間に向こうも驚いた様子だったが、すぐに無視された。
というよりは、むしろ嫌悪感を抱いているような・・・
都会生活者にはありがちの反応。・・・係わりたくないという気持ちがありありと現れていた。
普段は、階下の物音はほとんど聞こえない。もちろん、こちらも気を使って、音が響かないようにしている。特に夜中にアダルトビデオなどを観るときは、ヘッドフォンが必須だ。
一戸建てと違いマンションやアパートでは、特に生活音に注意が必要だ。自分の基準に頼ると間違いを犯しやすい。世の中、クラクションや電車の音でも目が覚めない人もいれば、 時計の針音で眠れない人もいる。騒音によるトラブルは結構多い。
階下の女性は引っ越した。それで、ぼくは彼女が引っ越した理由と、ぼくと電車で会った時になぜ嫌悪の表情を浮かべたのかがわかった。
深夜の無人の部屋から、よがり声が響いていた。
信じようと信じまいと
(立秋が過ぎたというのに・・・。一体何がしたいんだ自分)
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