定期の紛失防止のため、電車ではiPhoneで音楽を聴かないことにした。
このため、電車ではいつも吊革につかまって寝ている。
先日のことだ。ラッシュ時間を過ぎた時間帯の、さほど混んではいない電車の中で、吊革につかまっていたら、隣に立った小柄な若い女性がぐいぐいとぼくを押してくる。
「なんだ？こいつ！」
彼女は片手で文庫本を読みながら、上半身をぼくにあずけてくる。しかも、そんなに混んでもいない電車でだ。悪意っていうよりも、明らかに激しい敵意が感じられる。
「けんか売ってんのか？こいつ！」
電車が次の駅について、目の前に座っていた乗客が立ち上がった時だった。ぼくをぐいぐい押していた女は、すかさずその空いた席にお尻をすべりこませた。そして、座席から、ぼくをにらむ。
・・・唖然とした。
「なんだよ。こいつ！」と思う以前に、シートに腰かけているのが全員女性であることに気が付いたからだ。
また、やっちまった！
女性専用車。なんで、京浜急行は中途半端な位置に女性専用車があるんだろう・・・。
あわてて、ドア付近に移動しようとすると、先の女が口の端でニヤッとわらって、
「次の駅、ドアは反対」
なあおまえ、普通、そこまでやるか？見ず知らずの若い女が？
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