11.闇の中
その時だった。
チョウがダイニングの扉を開けて中に入ってきた。手に何かをぶら下げていたが、それはマネキンの首に見えた。チョウはぼくを見ると、うれしそうに奇妙な笑い声を発しながら近づいてくる。ぼくはこの事態が飲み込めず、茫然自失になっていた。チョウは手に持っていたマネキンの首をぼくに投げつけてきた。床にころがったそれを見ると、それは目を固く閉じたタカオカの生首だった。首の切り口のところから、血がしたたっている。驚いてへたり込んだぼくを見て、またチョウは甲高い奇妙な声で笑うと、ドイツ語でなにやら言ってくる。おもむろに腹にチョウからけりを食らい、ぼくは悶絶した。息がまったくできなくなってしまった。倒れたぼくの背中をチョウはさらにけりつけてくる。チョウは身動きができないぼくを肩に担ぎ上げると、ダイニングを出て二階につながる階段を上り始めた。必死で抵抗を試みるが、手足を縛られているので逃げられない。階段を上りきったすぐの部屋にぼくは運び込まれた。チョウは担いでいたぼくをベッドに投げ下ろす。投げ下ろされた時、ぼくの背中にベッドの上にあった、なにか柔らかいものがあたった。横を見るとシャワーカーテンを敷いたベッドの上には無残な姿のヨーコがいた。もう、息絶えているようで、ピクとも動かない。彼女の真っ白い全裸の体がそこにあった。腕を切断されて、敷かれたシャワーカーテンの上には血だまりができている。ぼくは、彼女の血だまりの感触を背中に感じて、ようやく事態を飲み込むことができた。ぼくは殺される。
そばで、一部始終をビデオカメラで撮影していたヤルダが、ニタニタ笑いながら近寄ってくる。チョウは、ぼくをうつぶせにすると、後ろ手に縛ったぼくの手を広げ、指をつかむとそれをねじ上げた。
指が折れそうな激痛が全身を貫いた。チョウは、片手で床に落ちていたペンチを拾い上げると、掴んでいたぼくの指にペンチの刃を押し当てた。そして、徐々に力を入れていく。
指先に激痛が再度走り、ぼくの喉から悲鳴が漏れていた。殺される。
ぼくは、ありったけの力を振り絞り、体を回転させ、仰向けになった。チョウの興奮して赤黒くふくれあがった顔が目に入る。その顔は、ケタケタ奇妙な声をあげながら、なおも笑っていた。
ぼくは、体をはねて、ありったけの力でチョウの顔に頭突きを食らわせた。額に強い衝撃が走り、見事にチョウの顔面にヒットした。その勢いで、チョウは後ろに吹っ飛んだ。鼻を抑えて起き上がるチョウ。すぐさま鼻血が吹き出てきて、チョウの顔は真っ赤になった。
ベッドの上の血で、ぼくを後ろ手に縛っていたロープが緩みだしていた。立ち上がったぼくは、ベッドの上に放り出してあった大きな肉切り包丁をめがけて、縛られた後ろ手を体ごとぶつけていった。ざっくりと手首が切れた感触があったが、手を縛っていたロープが切れた。
肉切り包丁をぼくは掴むと、足のロープを切った。切った手首から、おびただしい血が吹き出ている。
肉切り包丁を手にしたぼくを見て、チョウは、血だらけの顔で笑いながらなおも近づいてきた。手には、ナイフが握られている。ぼくは無我夢中で肉切り包丁を手に持つと、腰だめにしてチョウにぶちあたっていった。どうせ死ぬのなら、せめてこいつも一緒に地獄へ落としてやる。
包丁の先に、チョウの腹部のいやな感触があった。みると包丁は根元までチョウの腹に突き刺さっていた。ぼくは、ひざでチョウをひざでけりながら、包丁を引き抜いた。チョウは、自分の腹の傷のところからでてくる内臓を信じられないと言った目で見ている。
そのとき、ヤルダがビデオカメラを手に殴りかかってきた。額に衝撃があり、ぼくは崩れ落ちた。顔面をねらって、蹴ってきたその足を包丁で振り払った。包丁はヤルダの軸足のかかとにざっくりとささったが、ぼくは肩口をけられたショックで包丁を手から離してしまった。
ヤルダがもんどり打って床に倒れると同時に、這って部屋のドアに逃げ出した。
チョウがナイフを手に迫ってくる。ぼくは、跳ね起きると、ナイフを持ったチョウの手めがけて、思いっきり蹴りを入れた。ナイフがけし飛んで、チョウの腹に蹴りが入った。また、チョウの傷口から、血とともにグロテスクな色の内臓がはみ出てくる。ぼくは、床に転がったナイフを手にすると、チョウの喉を突き立てた。チョウが首を押さえるが、喉からは血が噴出すとともに、空気が漏れてシュウシュウ音がする。
ぼくは、這って部屋を出て行こうとするヤルダを追った。階段を転がり落ちたヤルダに追いつくと、背中から心臓をめがけてナイフを突き立てた。鈍い感触があり、ナイフは跳ね返された。ヤルダは意味不明の言葉で悲鳴をあげている。ぼくは、もう1度、同じ場所にナイフを突き立てた。今度は、根元までナイフの刃がめり込み、ヤルダは大きな声でうめくと動かなくなった。
その時だった。
チョウがダイニングの扉を開けて中に入ってきた。手に何かをぶら下げていたが、それはマネキンの首に見えた。チョウはぼくを見ると、うれしそうに奇妙な笑い声を発しながら近づいてくる。ぼくはこの事態が飲み込めず、茫然自失になっていた。チョウは手に持っていたマネキンの首をぼくに投げつけてきた。床にころがったそれを見ると、それは目を固く閉じたタカオカの生首だった。首の切り口のところから、血がしたたっている。驚いてへたり込んだぼくを見て、またチョウは甲高い奇妙な声で笑うと、ドイツ語でなにやら言ってくる。おもむろに腹にチョウからけりを食らい、ぼくは悶絶した。息がまったくできなくなってしまった。倒れたぼくの背中をチョウはさらにけりつけてくる。チョウは身動きができないぼくを肩に担ぎ上げると、ダイニングを出て二階につながる階段を上り始めた。必死で抵抗を試みるが、手足を縛られているので逃げられない。階段を上りきったすぐの部屋にぼくは運び込まれた。チョウは担いでいたぼくをベッドに投げ下ろす。投げ下ろされた時、ぼくの背中にベッドの上にあった、なにか柔らかいものがあたった。横を見るとシャワーカーテンを敷いたベッドの上には無残な姿のヨーコがいた。もう、息絶えているようで、ピクとも動かない。彼女の真っ白い全裸の体がそこにあった。腕を切断されて、敷かれたシャワーカーテンの上には血だまりができている。ぼくは、彼女の血だまりの感触を背中に感じて、ようやく事態を飲み込むことができた。ぼくは殺される。
そばで、一部始終をビデオカメラで撮影していたヤルダが、ニタニタ笑いながら近寄ってくる。チョウは、ぼくをうつぶせにすると、後ろ手に縛ったぼくの手を広げ、指をつかむとそれをねじ上げた。
指が折れそうな激痛が全身を貫いた。チョウは、片手で床に落ちていたペンチを拾い上げると、掴んでいたぼくの指にペンチの刃を押し当てた。そして、徐々に力を入れていく。
指先に激痛が再度走り、ぼくの喉から悲鳴が漏れていた。殺される。
ぼくは、ありったけの力を振り絞り、体を回転させ、仰向けになった。チョウの興奮して赤黒くふくれあがった顔が目に入る。その顔は、ケタケタ奇妙な声をあげながら、なおも笑っていた。
ぼくは、体をはねて、ありったけの力でチョウの顔に頭突きを食らわせた。額に強い衝撃が走り、見事にチョウの顔面にヒットした。その勢いで、チョウは後ろに吹っ飛んだ。鼻を抑えて起き上がるチョウ。すぐさま鼻血が吹き出てきて、チョウの顔は真っ赤になった。
ベッドの上の血で、ぼくを後ろ手に縛っていたロープが緩みだしていた。立ち上がったぼくは、ベッドの上に放り出してあった大きな肉切り包丁をめがけて、縛られた後ろ手を体ごとぶつけていった。ざっくりと手首が切れた感触があったが、手を縛っていたロープが切れた。
肉切り包丁をぼくは掴むと、足のロープを切った。切った手首から、おびただしい血が吹き出ている。
肉切り包丁を手にしたぼくを見て、チョウは、血だらけの顔で笑いながらなおも近づいてきた。手には、ナイフが握られている。ぼくは無我夢中で肉切り包丁を手に持つと、腰だめにしてチョウにぶちあたっていった。どうせ死ぬのなら、せめてこいつも一緒に地獄へ落としてやる。
包丁の先に、チョウの腹部のいやな感触があった。みると包丁は根元までチョウの腹に突き刺さっていた。ぼくは、ひざでチョウをひざでけりながら、包丁を引き抜いた。チョウは、自分の腹の傷のところからでてくる内臓を信じられないと言った目で見ている。
そのとき、ヤルダがビデオカメラを手に殴りかかってきた。額に衝撃があり、ぼくは崩れ落ちた。顔面をねらって、蹴ってきたその足を包丁で振り払った。包丁はヤルダの軸足のかかとにざっくりとささったが、ぼくは肩口をけられたショックで包丁を手から離してしまった。
ヤルダがもんどり打って床に倒れると同時に、這って部屋のドアに逃げ出した。
チョウがナイフを手に迫ってくる。ぼくは、跳ね起きると、ナイフを持ったチョウの手めがけて、思いっきり蹴りを入れた。ナイフがけし飛んで、チョウの腹に蹴りが入った。また、チョウの傷口から、血とともにグロテスクな色の内臓がはみ出てくる。ぼくは、床に転がったナイフを手にすると、チョウの喉を突き立てた。チョウが首を押さえるが、喉からは血が噴出すとともに、空気が漏れてシュウシュウ音がする。
ぼくは、這って部屋を出て行こうとするヤルダを追った。階段を転がり落ちたヤルダに追いつくと、背中から心臓をめがけてナイフを突き立てた。鈍い感触があり、ナイフは跳ね返された。ヤルダは意味不明の言葉で悲鳴をあげている。ぼくは、もう1度、同じ場所にナイフを突き立てた。今度は、根元までナイフの刃がめり込み、ヤルダは大きな声でうめくと動かなくなった。