5.陽光のメッシーナ
列車は空が白みかけた早朝のメッシーナ中央駅(Messina Centrale)についた。島へ渡るため途中フェリーに列車を積み込んだり、原因不明の停止時間があったりと予定より1時間以上遅れての到着だ。メッシーナには、メッシーナ中央駅の他に、メッシーナ・マリッティマ駅が手前にある。全ての電車はマリッティマ駅の後に中央駅を通るが、メッシーナで降りると言っていた隣のコンパートメントの客が手前の駅で降りたので不安になっていると、列車のなかで知り合ったイタリア人が、メッシーナ中央駅はもうすぐと教えてくれた。彼はまた、イタリア南部は治安が悪く、街を歩く時はスリだけでなく強盗もいるので注意すること、メインストリートから外れた路地では肩にかけたバッグをバイクに乗ったやつらがひったくって行くから、バッグはタスキがけにしなさいなどのアドバイスもくれた。
列車を降りるとそこはシチリア。東の空があかね色に染まりつつある。まだ早朝というのに熱風が吹き寄せ蒸し暑い。シチリア島でパレルモに続いて大きい都市のメッシーナ。駅の構内は結構人が多いが、駅のインフォマシオンはまだ閉まっている。ぼくらは女性2人を駅に置いて、ホテルを探すため、駅を出て大きな通りを歩いて行った。市内の道は、あちこちが一方通行のようだ。道の片側にイタリア車やドイツ車がずらっと駐車してある。ヨーロッパの旅行は、毎日ホテル探しの繰り返し。新しい土地に来ると、まずは駅のインフォメーションで安いホテルを探して落ち着く。ホテル探しの合間に、その辺の有名な観光地を回る。ぼくらは、いわゆる観光スポットハンターだった。一箇所に長く留まることはあまりしない。ホテルからホテルへ、列車から列車へ。毎日がこれの繰り返し。