Brokeback Mountain
ぼくは、映画の感想を書く時は、映画を観た直後ではなく観終わってしばらくして、完全に内容を消化できたと思った時に書くことが多い。しばらくたって、思い出せるシーンをつなげてストーリーを再構成した時に、ぼくの心に残った部分が抽出されてくるからだ。しかし、この映画は消化できそうもない。同じようになかなか消化できない映画に、中年男の美少年への愛を描いた「ベニスに死す」がある。ただし、こちらはプラトニック。
無理を承知で、想像力を最大限に働かせて考えて・・・男が男に惚れるって、こんなのだったのだろうか。ワイオミングのブロークバック・マウンテンの雄大な自然の中で、2人きりというシチュエーション。いくら衝動が起こったとしても、いきなり、男と男が求めあうものなのだろうか。そして、「ぼくは1年に数回じゃ物足らない」。・・・ということは、肉欲だけの繋がりをあらわしている。それでも、なぜ、普通に結婚して子供を作れるのだろう。
その一方で、死を賭して関係を続ける・・・。やはり、真の愛と呼ぶべきものなのだろうか?愛ってなに?
時代が変われば、彼らはいつも一緒にいられたわけだ。つまり、この映画は、悲劇、ゲイ版のロミオとジュリエットということか・・・。
そして、エニス・デルマー(ヒース・レジャー)の着ていた服が、ジャック・ツイスト(ジェイク・ギレンホール)の実家のクローゼットに隠されてあったということは、いつも会いたいと彼が思っていたということを暗示しているのだろう。つまりは、ジャックが子供を作って結婚してからの生活は、虚偽に満ちた空しいものだったのだ。ジャックの死後、エニスはジャックの実家を訪ねてその自分の服を遺品として譲り受ける。かれは、この先、永遠にジャックの思い出を抱いて生き続けていくことになるのか・・・。沈黙。・・・そうですか。