長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

言葉と音楽 ロマン

2010-01-05 06:43:42 | Weblog
朗読が俳優の新城彰さん、クラリネットがN響の山根孝司さん、ピアノが
chmp daction アントワープの大宅裕さん。
ロベルト・シューマンの「詩人の恋」から、始まった。
すべての曲の前に、新城さんが詩を朗読する。言霊と音楽が
まるで、精霊のように踊りだし、クラリネットもピアノも、
詩を語る「語り部」みたいな雰囲気を醸し出していた。
シューベルトの「野薔薇」も、若いころ学校の教材として、
学んだけど、本来はゲーテの語る妖艶な女性のシンボルとして
詠まれたものらしい。酒と薔薇の日々ではないが、やはり薔薇は
近づきすぎると、いつも棘の痛みをともなう、危うげな美しさを
持つものらしい。

後半はマーラーの「さすらう若人の歌」。マーラー自身が作詞した
詩だけに、音楽と詩が、うまくからみあっていた。
圧巻は、フーゴー・ヴォルフの「スペイン歌曲集」だ。
山根氏が15年ほど前に、演奏する縁があり、「いつか日本で
日本語の詩とともに、演奏してみたい」と念じていたものが、
実現した。もともとキリスト教の聖歌だ。聖歌というのは
静かな歌が多いけど、人間が本来持っている情熱的な現象の世界や、それに対峙する実相の世界が、陰陽みたいにうまく表現されているような曲が多い。
スペインの聖地、サンティエゴの道を、いつか歩いてみたいと思っているが、
その時には、またヴォルフの曲などを口ずさみながら、900kの道筋を
とぼとぼと歩いてみたいものだ。たぶんそこは、この世(現象世界)なのか、
あの世(実相世界)なのか、区別ができないくらいの世界ではなかろうか。

昨日の作曲家たちは、みなお医者さんから「精神病」と診断された人ばかり
だった。だからこそ、2世紀以上も世界中の人を感動させる曲をつくった、
ともいえる。音楽は、人間が生きていく途中の、恋のはかなさや、嫉妬や、
煩悶を表現するものが多い。何世紀たっても、途中に科学が進歩し、人間が宇宙
にいったり、墨田区に634mのタワーができるような時代になっても、
「人間そのもの」は、まったく変っていない、のがいい。