MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

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翻訳研究分科会終わる

2007年07月10日 | Weblog

日曜日の翻訳研究分科会は濃いメンバー18人の参加を得て無事終了。懇親会は体調が悪いような気がしたのでパスさせてもらった。長沼さんがいろいろ手配してくれるので助かる。分科会の前にカナダConcordia大学のNatalia Teplovaさんと会い雑談。Nataliaは明治期の翻訳が専門だそうだ。実に良くしゃべる。東口のジュンク堂まで本探しにつきあう。彼女はTTRの編集も手伝っており、日本特集号発行の遅れの理由(編集委員が替わった)、寄稿者の顔ぶれなど聞く。その後正門前でHiroko Cochrillさんをピックアップ。さっそくロシア語が飛び交っていた。

今朝も37度以上の微熱があり、出版健保に行く。前回の検査結果の詳しい数値も出ていた。良くなっているらしい。問診、触診の後、「あとは自力で治して下さい」というお言葉。もしかしたら名医かも。そういえばもう治っているような気がしてきた。


微熱続く

2007年07月07日 | 翻訳研究

コピーをしに池袋まで出たのがいけなかったのか、午後微熱が続く。立教では吉田さんに会った。

■「蔵蒙対訳「学者基本語」」の翻訳論はかなり柔軟なものであった。規範的prescriptiveであり、相矛盾する内容も含まれる。(これはSavoryのリストを思わせる。)

明日は第6回翻訳研究分科会です。人数はそう多くないかも知れないがコアなメンバーが集まりそうだ。詳しくは以下をごらん下さい。

http://blog.so-net.ne.jp/a-mizuno/archive/c20376539

佐藤美希さんからメールが来て、先週キャンベラで行われたJapanese Studies Association of Australia (JSAA)に出て発表してきたとのこと。Judy Wakabayashiも来ていて、『翻訳研究への招待』をセッションで紹介してくれたらしい。


(ちょっと遅いが)ブッシュ・安倍記者会見について

2007年07月06日 | 雑想

武田さんの博論では権力関係の中におかれた通訳者の役割が問題になっているが、それとの関わりで、雑談の中で4月27日のブッシュ・安倍合同記者会見の話が出た。気になったのでちょっとだけ調べてみたが、なんだかおかしなことをやっているようである。
従軍慰安婦問題について謝罪するつもりはあるのかという(日本人記者の)質問に対し、安倍総理はこう答えている。(ソースは総理官邸のサイト)

「慰安婦の問題について昨日、議会においてもお話をした。自分は、辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである。」

その通訳者による英語はこうなっている。(ソースはホワイトハウスのサイト)

PRIME MINISTER ABE: Well, in my meeting with the congressional representatives yesterday, I explained my thoughts, and that is I do have deep-hearted sympathies that my people had to serve as comfort women, were placed in extreme hardships, and had to suffer that sacrifice; and that I, as Prime Minister of Japan, expressed my apologizes, and also expressed my apologizes for the fact that they were placed in that sort of circumstance.

(apologizesはapologiesのミスタイプであろう。)ここでどうしても注目してしまうのは「申し訳ないという気持ちでいっぱい」の訳に expressed my apologies, and also expressed my apologies を当てていることである。「申し訳ない」は確かにexpress apologiesにも対応するが、普通は feel very sorryぐらいの語感ではないのか、何か作為が感じられる、とどうしても思ってしまう。ところで「議会においても話をした」というのは、前日26日に下院議長らと会談したことを指している。安倍総理はその会談の冒頭で自ら従軍慰安婦問題を取り上げ、「申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と述べたというのである。その英訳はAPによると、Regarding the extremely hard situation they were placed in, I am filled with a sense of apology.になっている。27日の合同記者会見での通訳者の訳はこれを受けたものと考えられる。「狭義の強制はなかった」という発言で非難され、アメリカ議会の非難決議を何とか避けたい安倍総理が、わざわざ日程の最初に行った会談での発言であるから、表現とその英訳については慎重に検討し、通訳者とも打ち合わせをしたと考えられる。推測になるが、日本語では「謝罪する」ではなく「申し訳ない」を使い、英語ではapoligiesにすること、「申し訳ないという気持ち」はa sense of apologyにすること、さらに、「申し訳ない」のは「そうした極めて苦しい状況におかれたこと」についてであって、日本軍(ひいては日本政府)が強制したことに対してではないことを明確にすること、ということであろう。それは上記2つの英訳によく現れている。
CNNとのインタビューでもまったく同じ表現を使ったことが報じられている。(ソース:The Japan Times 4/26)

"I do also harbor a sense of apology to the women who found themselves in that situation, in other words the situation of being 'comfort women,' " CNN quoted him as saying, using Japan's euphemism for the sex slaves.

こうした一連の発言の通訳を見てみると、外交通訳者はhonest spokespersonではなく、言葉は悪いがreluctant accompliceであるかのようだ。いずれにせよこの程度の操作で何とかなるというものでもないと思うのだが。(実際いろいろ反発が出ている。)安倍首相はそれが自分の政治信条ならば、外交の場でももっと堂々と主張したらいい。

このような点について日本のメディアはまったく注目していない。以下は28日の朝日新聞の記事である。

「訪米中の安倍首相は27日午前(日本時間27日夜)、ワシントン近郊のキャンプデービッドでブッシュ大統領と会談した。拉致を含む北朝鮮問題について、両国が強い姿勢で臨むことで一致。両首脳は北朝鮮が6者協議における核廃棄に関する合意の履行を遅らせた場合、追加の制裁措置を行う可能性を示唆し、北朝鮮を牽制(けんせい)した。従軍慰安婦問題について安倍首相は「心から申し訳ない」と述べ、大統領は謝罪を受け入れた。」

「当初、議題にはしない予定だった従軍慰安婦問題について、首相は「人間として首相として心から同情し申し訳ない思いだ。21世紀を人権侵害のない世紀にするため努力する」と説明。大統領は「河野官房長官談話と米国内における首相の発言は、ともに極めて率直で心からのものだ」と評価した。 」

これではわざわざ現地で取材する意味がないではないか。このサイトには70年代以降の日本政府による謝罪のリストがあるので、興味のある人はさかのぼって調べてみるといい。僕は面倒なのでこれ以上はやらないが。

 


武田さんの博士論文など

2007年07月03日 | 通訳研究

ここのところ毎週X線と血液検査を続けている。高熱が出ることはなくなり、医者もほとんど治ったと言っているが、まだ少し頭がぼーとしている。

先月末、長沼さんとMIISの武田さんに会い、博士論文をいただく。タイトルはSociopolitical Aspects of Interpreting at the International Military Tribunal for the Far East (1946-1948)でスペインのUniversitat Rovira i Virgiliに提出されたもの。supervisorsはFranz PochhackerとMiriam Shlesingerだ。全8章の構成だが、まだ第1章を読み終えたところ。それにしても、極東軍事裁判の通訳について博士論文が書かれるまでになったのだなという感慨を禁じ得ない。10年ほど前、大東の渡部さんにただの思いつきで「東京裁判、書いてみれば」などと言っていたことを考える隔世の感がある。

その武田さんからのお知らせ。(詳しくはリンク先を参照のこと)

New Research in Translation and Interpreting Studies
Tarragona, Spain, 18-20 October 2007

http://isg.urv.es/seminars/2007_new_research/index.htm

THE DEADLINE: JULY 15TH

The Intercultural Studies Group is pleased to announce the third international conference for graduate students and young scholars engaged in research on Translation and Interpreting Studies, many of whom will be presenting their first papers. The format is designed to promote international contacts among novice researchers and to encourage extensive feedback from peers.

Languages: English, Spanish

今週の日曜日(8日)は翻訳研究分科会でHiroko Cockerillさんをお迎えすることになっている。(分科会の案内は
こちら。)この分科会にはカナダのTTRの編集をしているNatalia Teplovaさんも参加する予定。彼女も専門はロシア語-日本語の翻訳研究のようだ。かなり達者な日本語を話す。