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医療観光の推進 国民皆保険揺らぐ懸念も

2013-10-23 13:24:58 | 多文化共生
(以下、京都新聞から転載)
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医療観光の推進 国民皆保険揺らぐ懸念も
文化部 日下田貴政

医療観光推進の立場からさまざまな事例発表があった国際観光医療学会の学術集会(10月12日、京都市下京区のホテル)
 「医療観光・医療ツーリズム」が国の政策となり、一部の医療機関や地域で進められている。人間ドックや治療に外国人を誘客し、経済の活性化や国際貢献を目指すが、「混合診療の全面解禁や国民皆保険の崩壊につながる」との反対も根強い。医療を受ける私たちにどんな影響が及ぶのか、懸念材料も含めた議論が不足していると感じる。
 医療観光は、一般に「医療行為を受ける目的で海外に渡航すること」を指す。いかに誘客し、先行するタイや韓国に追いつけるかと、国の動きはここ数年、観光や産業の振興と連動して活発だ。2010年6月に閣議決定した「新成長戦略」に「外国人患者の受け入れ」を盛り込み、12年3月の「観光立国推進基本計画」では「医療と連携した観光の推進」を掲げる。
 そんな中、医療観光も含めて「観光医療」をテーマとする国際観光医療学会の学術集会が今月12日、京都市内であった。観光庁の担当者は「世界的に良質な医療を求めて他国に渡る渡航者が増える中、信頼できる渡航先として外国人患者の受け入れ体制整備が期待される」と訴えた。
 だが、保険診療に関連して、日本医師会や京都府医師会などは根本的に異議を唱える。
 日本では国民は誰でも治療費の一部負担で医療が受けられる「国民皆保険」が維持されている。安全で普遍性のある医療は保険の対象にするという考えで、保険外診療(自由診療)との併用(混合診療)は原則禁止されている。
 混合診療の場合は全額が自費となる。外国人患者は自由診療となり、必然、医療観光の対象も富裕層となる。その受け入れ促進を機に、日本人の富裕層も含めて医療にアクセスできる格差が拡大すると懸念しているのだ。
 また、外国人患者の受け入れに旅行会社やコーディネーターなど営利企業が関与することへの批判もある。
 「医療観光は、所得の多寡で受けられる医療に差が出る混合診療の全面解禁につながる可能性があり、国民皆保険の空洞化や地域医療の弱体化を招く恐れもある。デメリットの方が大きい」。府医師会の城守国斗理事は指摘する。
 こういった懸念や批判があることはあまり知られていない。これらに対する明確な反論や説得材料は推進派からほとんど聞かれない。
 医療観光に詳しい成美大の辻本千春准教授は韓国を例に、「国の機関が国民にきちんと説明責任を果たしてきた。外国人患者の受け入れは医療機関のベッド数の5%までとするなどのルールも決めている」と話す。
 医療観光は外国人富裕層をターゲットとした一部の取り組みというイメージが強い。だが、一般市民と医療の関わりに影響が及んでくるなら、人ごとでは済まない。もっとオープンな議論が必要だ。
[京都新聞 2013年10月23日掲載]

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