多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

生活保護見直し 水準の適正化は必要だが

2013-01-22 12:49:58 | ダイバーシティ
(以下、西日本新聞から転載)
==================================
生活保護見直し 水準の適正化は必要だが
2013年1月22日 10:36

 生活保護の支給水準(基準額)を引き下げる動きが、本格化してきた。

 現行の支給水準は子育て世帯などで保護を受けていない低所得者世帯の生活費を上回る-。そんな厚生労働省の検証結果を受け、政府は2013年度から3年かけて段階的に引き下げる方針という。

 社会的公平の原則に立てば、懸命に働く人の所得よりも生活保護支給額の方が高い「逆転現象」は、許されまい。支給水準の適正化は必要である。

 ただし留意したいのは、生活保護が生活困窮者にとって最後の「安全網」であることだ。その支給水準は最低賃金や就学援助、基礎年金、住民税の非課税限度額などとも密接に絡む。

 最初から「減額ありき」や「一律カット」ではなく、生活保護以外の総合的な困窮者対策や自立支援策などと連動させながら、慎重に進めるべきだ。

 生活保護の受給者は昨年10月現在、全国で214万人を超え、過去最多を更新した。12年度の支給総額は3・7兆円に達する見込みで、国や自治体の財政を圧迫する要因ともなっている。

 不正受給が問題化し、都道府県別人口当たり受給率で最大10倍の開きがあるなど、地域格差も大きい。最低賃金より高い「逆転」地区もある。

 制度を持続させるためにも、矛盾の解消や適切な是正は急務だろう。

 厚労省の今回の検証は、受給者の年齢や家族数など世帯類型別に考察したもので、より実態に即したといえる。

 その結果、一般の低所得者の支出と比べ、夫婦と子どもなど家族数が多い世帯では生活保護の支給水準が高くなった。その半面、単身世帯や60歳以上の夫婦2人世帯では支給水準の方が低かった。

 いわば、働く方が損になるという「逆転現象」は国民の勤労意欲をそぐ。解消に異論はない。だが、支給水準の引き下げが最低賃金など一般の労働条件の低下に作用するのでは「貧困の連鎖、悪循環」につながりかねない。本末転倒だ。

 また、3人以上の多人数世帯は7%にすぎず、過半数の60歳以上の単身世帯では逆に一般を下回る。引き下げは全体ではなく、対象世帯を絞るべきだ。自民党は衆院選公約に掲げた「保護費の原則10%削減」に、こだわってはならない。

 生活保護については、保護費の半分を占める医療費の抑制、増える不正受給の防止、働ける受給者の自立支援の強化なども、見直しテーマになっている。

 厚労省は今回、受給者が受診する「指定医療機関」への有効期限の設定や、不正受給の罰則強化を打ち出した。現実的対応であり、おおむね理解できる。

 また、働ける世代の生活困窮者の自立を促すため、生活訓練を含む就労支援策や、失業して住居を失った人への家賃相当額の有期支給なども提唱している。

 生活保護に至る前の困窮者対策も含めた総合的な支援策が重要である。体制を強化し、着実に実施してもらいたい。


=2013/01/22付 西日本新聞朝刊

最新の画像もっと見る

コメントを投稿