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発達障害者に求刑超える判決 精神保健福祉士に聞く

2012-09-06 09:16:37 | ダイバーシティ
(以下、神戸新聞から転載)
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発達障害者に求刑超える判決 精神保健福祉士に聞く 

「判決理由を聞き、福祉の常識と社会の常識は違うのだと思い知らされた気がした」と話す笹森理絵さん=神戸市灘区深田町4

 姉を刺殺したアスペルガー症候群の男性被告に対し、7月30日に大阪地裁であった裁判員裁判で、求刑(懲役16年)を上回る判決(同20年)が言い渡されたことに、発達障害の当事者や家族からは「判決は誤解と偏見を助長させる」と反発の声が上がっている。同じアスペルガーであることを公表している精神保健福祉士の笹森理絵さん(42)=神戸市北区=に聞いた。(黒川裕生)


 ‐障害を理由とした減刑例はあるが今回は逆。

 (治安維持を理由に精神障害者を監禁できるようにした)明治時代の「精神病者監護法」を思わせるほどの時代錯誤。発達障害への理解の欠如に驚き、ショックだ。

 世界保健機関(WHO)は2001年に障害の分類を改めている。障害による社会的不利は、本人が受容するしかないという従前の考えから、周囲の働き掛けや工夫といった環境次第で改善し得るというとらえ方に変わり、福祉の世界ではそれが常識だ。量刑の理由を、「発達障害がある」という個人因子に求めた判決はその点でも時代に逆行している。

 ‐判決はアスペルガー症候群の特性を顧みていない印象もある。

 「十分に反省していない」という意味の言葉が判決理由にあった。もともとアスペルガー症候群の人の多くは感情を表情に出すのが苦手だ。「反省しているが、どう表現すればいいか分からない」が実際のところではないか。「反省していない」と「反省していることを表せない」は違う。

 ‐男性被告は大阪高裁に控訴した。どんな支援が必要か。

 外国人被告と同じように、法廷で男性の気持ちや考えを代弁する通訳のような人が必要。健常者からは「(アスペルガー症候群の人に)何を言っても通じない」と思われがちだが、当事者は実は繊細で、周囲がよく見えている。言葉の端々やしぐさが発する小さなサインから、当事者の思いをくみ取れる人がいれば、無理解にさらされることも減るはずだ。ただ、今はそんな仕組みはない。せめて発達障害への正しい理解が多くの人に広まってほしい。

 ‐判決は、発達障害者の社会的受け皿に触れ、支援体制の不備を指摘したともいえる。

 知的レベルの高い当事者もいるため、従来の福祉の考え方では限界がある。作業所のような場所だけではなく、その人に応じた環境設定が必要だ。2005年の発達障害者支援法施行を契機に、公的な発達障害者支援センターや地域活動支援センターのほか、就労支援機関も徐々に増えてきている。

 一方、これまで発達障害児の教育では、「障害はその子にとって個性」という考えを尊重し過ぎるあまり、回復可能な挫折や失敗すら経験させないよう、親や支援者が神経質になっていた面もある。実際、就労しても企業のハードルを越えられない人もいる。「将来どう生きるのか」を見据えた教育をしなければ、居場所がないままだ。


 【ささもり・りえ】 1970年神戸市生まれ。32歳で注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害、アスペルガー症候群、発達性協調運動障害と診断される。3人の子どもにも発達障害があり、当事者と親の目線からつづった著書「ADHD・アスペ系ママ へんちゃんのポジティブライフ」(明石書店)がある。5月からクロスジョブKOBEの就労支援員。


 【アスペルガー症候群】 他人の気持ちを推測したり理解したりするのが苦手で、一方的に話すなど対人関係に難しさのある広汎性発達障害に位置付けられる。生まれつきの脳の機能障害が原因とされる。言葉の発達に遅れはなく、知的レベルは高いとされる。

(2012/09/04 11:14)

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