(以下、毎日新聞【新潟】から転載)
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国籍条項:新潟市、一般行政職受験資格から撤廃 議会に報告へ /新潟
◇政令市として最後に--来年度実施方針
新潟市は来年度、一般行政職の受験資格から「国籍条項」を撤廃する方針を固めた。全国17の政令指定都市のうち、新潟市以外はすべて外国人に門戸を開いており、市の対応が遅れていた。篠田昭市長は毎日新聞の取材に「先行事例を参考に今年度中に運用基準を決め、市議会に報告したい」と話した。【黒田阿紗子】
新潟市職員の45職種のうち、現在、外国人の受験を認めているのは、薬剤師などの専門職や清掃作業員など22職種。実際に勤務しているのは、看護師1人という。受験者の大部分を占める一般行政職など残り23職種は、採用試験案内に「日本国籍を有しない者は受験できない」と国籍条項をただし書きしている。
市国際課によると、政令市のうち堺市が全職種で外国人の受験を許可。横浜市は消防職と衛生監視員、他14市は消防職を除き、昇任を制限した上で国籍条項を撤廃。在日本大韓民国民団中央本部の調べでは、条件付きも含めて撤廃は11府県、267市(07年1月現在)に広がっている。
新潟市では政令市移行直前の07年、2月議会一般質問で篠田市長が「一般行政職の国籍条項撤廃に向けて市人事委員会と協議する」と答弁した。だが、具体的な調整は進んでいなかった。
篠田市長は毎日新聞の取材に、政令市の利点を「外国籍の人口が多い分、その能力を活用できるところ」とした上で、「(採用の)入り口でシャットアウトというのは、市の姿勢としてよくない。来年の採用から体制を改めたい」と答えた。ただ「現段階で重要なポストを外国籍の方に任せるのは、市民の理解を得られない」と、採用後は昇任を制限する方針を示した。
国籍条項の撤廃は議決を必要としないが、今年度中に市議会で運用基準を説明し、理解を求める予定。
「市外国籍市民懇談会」の座長で、県立女子短大の若月章教授(国際関係論)は「多文化共生の流れの中、新潟市の対応は遅れていた。対外的に開かれた都市を目指すなら、身近な外国籍の人の公民主権確保は必須。民間企業の外国人雇用に対する理解促進にもつながる」と指摘している。
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■解説
◇開かれたまちづくりを
07年3月、市外国籍市民懇談会の委員13人が、篠田昭市長に報告書を手渡した。福祉、教育など幅広い問題改善を求める内容。その中で、篠田市長はあえて国籍条項の撤廃を求める項目に触れ「07年で改善する方向で打ち出したい」と明言した。
直前の2月議会で篠田市長の踏み込んだ答弁もあり、関係者の期待は一気に高まった。だが、表立った動きのないまま現在、08年度の採用試験が行われている。
足かせとなったのは、07年6月から約1年かけて議論された「市自治基本条例」制定案。当初、市は永住外国人の住民投票の請求権も盛り込んで提案したが、保守系2会派などから「拉致問題が解決していないのに、在日外国人の権利を整備するのは納得いかない」などの批判を受け紛糾。最終的には外国人に関する記述をそっくり外し市側が折れる形で制定にこぎ着けた。
篠田市長は1年遅れた理由について「(自治基本条例の)影響がないとは言い切れない」と答えた。しかし、若月教授は「在日外国人の権利と拉致問題は別の次元の話」と指摘する。懇談会元委員の韓国籍男性も「能力がある人を採用するのは国際的に常識。市にとってもプラスになる」と進言する。
「開かれた港町」「極東アジアの拠点化推進」。対外交流で新潟市が発する言葉も、身近な外国人の受け入れ態勢が不十分では、上滑りしている。篠田市長が言う「外国籍市民が暮らしやすいまちは、日本人や新潟市を訪れた人にとってもいいまち」の精神で、開かれたまちづくりを進めるべきだろう。【黒田阿紗子】
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■ことば
◇国籍条項
公権力の行使などに携わる公務員には、日本国籍を必要とする原則。外国人が公務員となるのを否定する法律はないが、1953年に内閣法制局が「当然の法理」として示した見解を根拠に、外国人は長年排除されてきた。96年、川崎市が課長級以上の昇任を認めない条件で採用に踏み切り、97年には東京都国籍条項訴訟の東京高裁判決が「外国人の就任が許される管理職もある」と判断した。
毎日新聞 2008年9月24日 地方版
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国籍条項:新潟市、一般行政職受験資格から撤廃 議会に報告へ /新潟
◇政令市として最後に--来年度実施方針
新潟市は来年度、一般行政職の受験資格から「国籍条項」を撤廃する方針を固めた。全国17の政令指定都市のうち、新潟市以外はすべて外国人に門戸を開いており、市の対応が遅れていた。篠田昭市長は毎日新聞の取材に「先行事例を参考に今年度中に運用基準を決め、市議会に報告したい」と話した。【黒田阿紗子】
新潟市職員の45職種のうち、現在、外国人の受験を認めているのは、薬剤師などの専門職や清掃作業員など22職種。実際に勤務しているのは、看護師1人という。受験者の大部分を占める一般行政職など残り23職種は、採用試験案内に「日本国籍を有しない者は受験できない」と国籍条項をただし書きしている。
市国際課によると、政令市のうち堺市が全職種で外国人の受験を許可。横浜市は消防職と衛生監視員、他14市は消防職を除き、昇任を制限した上で国籍条項を撤廃。在日本大韓民国民団中央本部の調べでは、条件付きも含めて撤廃は11府県、267市(07年1月現在)に広がっている。
新潟市では政令市移行直前の07年、2月議会一般質問で篠田市長が「一般行政職の国籍条項撤廃に向けて市人事委員会と協議する」と答弁した。だが、具体的な調整は進んでいなかった。
篠田市長は毎日新聞の取材に、政令市の利点を「外国籍の人口が多い分、その能力を活用できるところ」とした上で、「(採用の)入り口でシャットアウトというのは、市の姿勢としてよくない。来年の採用から体制を改めたい」と答えた。ただ「現段階で重要なポストを外国籍の方に任せるのは、市民の理解を得られない」と、採用後は昇任を制限する方針を示した。
国籍条項の撤廃は議決を必要としないが、今年度中に市議会で運用基準を説明し、理解を求める予定。
「市外国籍市民懇談会」の座長で、県立女子短大の若月章教授(国際関係論)は「多文化共生の流れの中、新潟市の対応は遅れていた。対外的に開かれた都市を目指すなら、身近な外国籍の人の公民主権確保は必須。民間企業の外国人雇用に対する理解促進にもつながる」と指摘している。
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■解説
◇開かれたまちづくりを
07年3月、市外国籍市民懇談会の委員13人が、篠田昭市長に報告書を手渡した。福祉、教育など幅広い問題改善を求める内容。その中で、篠田市長はあえて国籍条項の撤廃を求める項目に触れ「07年で改善する方向で打ち出したい」と明言した。
直前の2月議会で篠田市長の踏み込んだ答弁もあり、関係者の期待は一気に高まった。だが、表立った動きのないまま現在、08年度の採用試験が行われている。
足かせとなったのは、07年6月から約1年かけて議論された「市自治基本条例」制定案。当初、市は永住外国人の住民投票の請求権も盛り込んで提案したが、保守系2会派などから「拉致問題が解決していないのに、在日外国人の権利を整備するのは納得いかない」などの批判を受け紛糾。最終的には外国人に関する記述をそっくり外し市側が折れる形で制定にこぎ着けた。
篠田市長は1年遅れた理由について「(自治基本条例の)影響がないとは言い切れない」と答えた。しかし、若月教授は「在日外国人の権利と拉致問題は別の次元の話」と指摘する。懇談会元委員の韓国籍男性も「能力がある人を採用するのは国際的に常識。市にとってもプラスになる」と進言する。
「開かれた港町」「極東アジアの拠点化推進」。対外交流で新潟市が発する言葉も、身近な外国人の受け入れ態勢が不十分では、上滑りしている。篠田市長が言う「外国籍市民が暮らしやすいまちは、日本人や新潟市を訪れた人にとってもいいまち」の精神で、開かれたまちづくりを進めるべきだろう。【黒田阿紗子】
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■ことば
◇国籍条項
公権力の行使などに携わる公務員には、日本国籍を必要とする原則。外国人が公務員となるのを否定する法律はないが、1953年に内閣法制局が「当然の法理」として示した見解を根拠に、外国人は長年排除されてきた。96年、川崎市が課長級以上の昇任を認めない条件で採用に踏み切り、97年には東京都国籍条項訴訟の東京高裁判決が「外国人の就任が許される管理職もある」と判断した。
毎日新聞 2008年9月24日 地方版
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