多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

「移民を拒んだ日本の活力は乏しい」

2010-03-04 09:26:13 | 多文化共生
(以下、日経ビジネスオンラインから転載)
==============================================
「移民を拒んだ日本の活力は乏しい」
外国人労働者への過度な依存を抑制する方針へ転換したシンガポール

 シンガポールの成長戦略が転換点に差しかかっている。

 直近10年間(2000年~09年)の平均成長率は約5%と2001年のITバブル崩壊や昨年の金融危機で2度にわたりマイナス成長に陥ったにもかかわらず、経済は順調に拡大してきた。

 とりわけ、2004年から2007年の平均成長率は8%台に達し、1人当たりGDPが日本に匹敵する国としては驚異的な成長ペースを記録した。

 政府は2010年の成長率は、前年の落ち込みの反動で最大6.5%に達する可能性があるものの、中期的に5%超の成長ペースを持続することは現実的ではないとみている。

 こうした見方の背景には、シンガポールはアジアの高成長の果実を享受できる環境下にあるものの、これまで成長の源泉であった労働力の拡大、とりわけ外国人労働者の拡大が限界に近づいていることがある。

労働者の3人に1人が外国人

 人口規模が小さく、少子化が進展しているシンガポールにとって、外国人労働者の積極的な受け入れは成長戦略の柱の1つであった。

 過去10年間にシンガポールの総人口は約400万人から約500万人へ約100万人増加したが、内訳をみると、シンガポール人(国籍保有者と永住権保有者の合計)の増加数が約50万人、外国人の増加数が約50万人であった。

 もっとも、シンガポール人の増加分のうち約25万人が永住権を取得した外国人であることを考えると、総人口増加分の約4分の3を外国人が占めたといえる。この結果、労働者の3人に1人は外国人が占めるようになった。

 シンガポールの外国人労働者と聞くと、外資系企業の駐在員を思い浮かべる人がいるかもしれないが、大多数は建設業や家政婦・レストランなどサービス業に従事する単純労働者である。

 こうした仕事に従事することを希望するシンガポール人が少ないこともあり、インドネシアやインドなど域内の労働力に依存してきた。企業にとっては、外国人雇用税(注)を支払ってもシンガポール人に比べ安価な労働者を確保できるというメリットがある。

 他方、政府にとっては、リー・シェンロン首相が「外国人は雇用の調整弁」と明言しているように、不況期には外国人労働者を減らすことで、シンガポール人の雇用を優先することができるというメリットがある。

(注)外国人雇用税とは、雇用主が外国人労働者を雇う際に政府に支払う税金。業種やスキルに応じて税金額が異なる。一般に、スキルが低い労働者ほど税金が高くなる仕組み。

外国人労働者急増の弊害を指摘する声も

 もっとも、近年では外国人労働者の急増による問題を指摘する声が上がっている。1つは成長の質が低下していることに対する懸念である。

 外国人を中心とした労働力の拡大は、成長の源泉となった半面、労働生産性の伸びは低下している。政府の試算によると、2000年~2009年の労働生産性上昇率は年平均1.4%にとどまり、91~99年の3.5%から大幅に低下した。

 また、労働生産性の絶対水準を主要国と比較すると、サービス業は米国の6割、建設業は日本の3割にとどまっている。これらは外国人労働者への依存度が高い業種であり、企業は投資により生産性を向上させるよりも、安価な外国人労働者に依存する傾向があると考えられる。

 もう1つは、生活の質が低下していることに対する懸念である。外国人の急増に交通や住宅など生活インフラの拡大が追いついておらず、国民の間から通勤時の地下鉄は「東京並みのラッシュ」という不満が出るようになった。

 筆者の感覚では、東京ほど混雑しているわけではないが、ガソリン価格の上昇で公共交通の利用者が増加していることも手伝い、混雑度が増していると感じることは事実である。このほか、増加する外国人労働者の宿舎建設を巡る住民の抵抗もある。

 さらに、レストランや小売など接客業において、英語力が十分でない外国人労働者が増加した結果、英語が通じないという問題も生じている。

 政府は、公用語である英語は、国際都市の地位を維持する必須条件として、レストラン・ホテル・小売業に従事する外国人労働者に対し、今年7月から就労ビザ取得時の英会話テストを導入する方針を打ち出した。

外国人労働者を抑制する方針へ転換

 こうした状況を踏まえ、政府は外国人労働者を抑制する方針へ舵を切った。2月1日に政府が発表した新経済戦略では、労働生産性を向こう10年間で年率 2~3%引き上げ、3~5%成長を目指す方針を打ち出したが、その中で外国人労働者への過度な依存を抑制することが盛り込まれた。

 新経済戦略を受けて発表された2010年度予算案では、企業に対し労働生産性を高めるための設備投資の優遇税制と共に、外国人雇用税の段階的な引き上げが盛り込まれた。

 今回の方針転換は、外国人労働者への依存度をこれ以上は高めないというもので、外国人労働者を大幅に減らす方針ではない。少子化の進行に歯止めがかからない中、シンガポールの経済成長に外国人の存在が不可欠であることに変わりないからだ。

 政府は、単純労働者を減少させる一方、高いスキルを有する外国人労働者は引き続き歓迎する方針である。

外国の人材を締め出せば景気低迷が続く

 昨年8月、建国の父であるリー・クアンユー顧問相は、「日本は移民の受け入れを拒んできたため経済の活力が乏しい」と述べ、外国の人材を締め出せば日本のように長期景気低迷が続くとの危機感を示した。

 マクロ経済の観点からみると、今回の政策転換は経済規模の拡大から生産性の向上へ軸足をシフトさせることを意味する。シンガポール経済は順調に発展した結果、アジアで最も高い経済水準に達した。

 小さな都市国家として資源の制約が多い中、今後も持続成長を維持するためには、外国人労働者を活用しつつ、一段と付加価値が高い経済構造へシフト出来るか否かがカギを握っているといえよう。

国家試験で難解な漢字に読み仮名 政府はNO

2010-03-04 09:25:46 | 多文化共生
(以下、IBTimesから転載)
==============================================
国家試験で難解な漢字に読み仮名 政府はNO

2010年03月03日 11:00更新 mailメール

 政府は介護福祉士の試験問題に「褥瘡」(じょくそう)「清拭」(せいしき)等の用語が使用され、日本人でも難解なことから「外国人介護福祉士、看護師の国家試験に対し、読み仮名をつけるべきではないか」と馳浩衆議院議員が求めた質問に答え「介護福祉士候補者等の受入制度を創設した趣旨にかんがみ、1人でも多く介護福祉士試験等に合格できるよう、日本語能力の向上策を含めた対応策を検討したい」と回答したものの「介護福祉士試験や看護師国家試験問題の漢字に読み仮名をつける考えはない」と現行通りの出題形式で今後も試験を実施する考えを示した。

 また、「介護福祉士は3年の実務経験が必要で4年以内に国家試験に合格できなければ帰国せざるをえない(ことを配慮し)、受験機会を増やすべきではないか」との意見にも「現時点では、増やすことは予定していない」と受験生の努力を求めるにとどめた。

 政府は、試験問題での読み仮名つけや受験機会の増について否定的な理由として「介護や医療の現場では、医師、看護師、介護職員等が相互に連携して業務を行うとともに、利用者や患者、その家族らと密接に意思疎通を図る必要がある。(このため)外国人介護福祉士候補者や外国人看護師候補者についても、十分な日本語の能力を有していることが不可欠」としている。

 現行制度では看護師の場合は3年、介護福祉士の場合は4年の滞在期間中に資格を取得できなければ、帰国しなければならないことになっており、馳衆議院議員は「国家試験で使われる難解な漢字が大きな壁になっている。日本人でも難解な用語で表記された試験を外国人に課すことは、事実上外国人を排除する事にもなりかねない」と改善を求めていた。
(編集担当:福角忠夫)

外国人の共生 言葉の壁高く

2010-03-04 09:25:23 | 多文化共生
(以下、読売新聞から転載)
==============================================
(1)外国人の共生 言葉の壁高く
「吐瀉物」「飛沫感染」「滲出液」など看護に関する難しい専門用語の読みを黒板に書くインドネシア人候補者ら(昨年12月24日、静岡県函南町で)

 外国人との共生へ歩み始めた日本。日本語教育の体制整備が急務だ。

 飛沫(ひまつ)感染、滲出(しんしゅつ)液、吐瀉(としゃ)物……。日本人講師が漢字の書かれた紙を黒板に張った。「この漢字の読みを書いてください」。インドネシア人の男女が前に出て、次々に書いていく。

 昨年12月24日、静岡県函南(かんなみ)町の研修宿泊施設、富士箱根ランド。経済連携協定(EPA)により、日本が2008年度に受け入れを始めた看護師・介護福祉士候補者インドネシア人2期生361人の研修が行われた。

 日本で正式に就労するには、看護師候補者は来日3年以内、介護福祉士候補者は同4年目に国家試験に合格することが条件だ。このため、初歩から始めた日本語の研修では、専門用語など高度な内容にまで及んだ。

 当初は全体の9割が日本語初心者だった。だが、朝8時から夜9時までの缶詰め講義に夜中までの自習体制のおかげで、日常会話はほぼ問題ないレベルになった。

 とはいえ、昨年度は、1期生の看護師候補者104人中82人が国家試験を受けたが、日本語という言葉の壁が立ちはだかり、全員不合格。全体の合格率は89・9%だった。

 2期生で看護コースに参加していた女性、シスカ・ヌルメナサリさん(25)は「『骨折』など漢字が難しい。音読みに訓読みもある。母国で看護経験は2年あり、インドネシア語なら合格の自信はありますが、日本語での受験にはもっと勉強しないと」と日本語習得の難しさを語る。

 研修にあたった人材派遣・教育事業会社の担当者(49)は、「国家試験独特の読解力習得が課題。研修終了後は、個々のがんばりに期待するしかない」と話す。

職員と仕事について打ち合わせをするディディさん(右から2人目)(2月18日、奈良県天理市で)

 「『認知症』と読めます、でも書くのはちょっと……集中研修中は漢字で書けましたが」と頭をかくのは、08年度来日の1期生男性、ディディ・スへディさん(25)。母国の看護大学を卒業後、半年間の事前研修を経て、昨年1月末から、奈良県天理市の老人保健施設「ならふくじゅ荘」で研修生として働いている。

 仕事は週5日1日約7時間、入浴や排せつ、食事の介助などをしている。試験勉強は仕事の前後の計2時間半で。国家試験を受けられるのは、2012年1月、1回きりだ。

 同施設では、ディディさんら研修生がインターネット学習を週3回、受けられるようにしたが、これだけでは試験合格は難しい、と急きょ施設スタッフによる週2日の学習指導も加えた。費用はいずれも施設の持ち出しだ。

 受け入れ責任者、岡田智幸さん(36)は「まず合格してもらいたい。日本を外国の人に助けてもらうのだから、施設お任せでなく、国は長期的・継続的学習支援を」と訴える。

 現場の声を受け、国も来年度以降、日本語学校通学の費用補助、再度の集団研修開催など具体的支援に乗り出す。

 安里和晃(あさとわこう)京都大学准教授(39)は「日本語能力や日本の医療事情に不案内な人材に対し国家資格取得という要件を課しておいて、確実に取得してもらうプロセスが欠如しているのは人材の使い捨てと指摘されても仕方がない。受け入れの展望を明確にした上で支援体制を整備しなければならない」と話している。(京極理恵、写真も)

 経済連携協定 物品やサービスの貿易以外に人の移動や投資なども加え、経済関係の強化を目指す協定。09年度からフィリピン人候補者受け入れも始まり、計310人が来日。27人は事前研修後、介護福祉専門学校で学ぶ「就学コース」に進む。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
公的な日本語教育 不十分

 外国人登録者数は1969年以降年々増え、2008年末で約222万人に及ぶ。一方、国内の日本語学習者は約16万7000人(同年11月)。入国後の公的な日本語教育は、義務教育を除くとほとんどなく、長期滞在しても日本語の読み書きがきちんとできない外国人は少なくない。

 文化審議会国語分科会日本語教育小委員会は、来日したばかりの外国人を対象に、最低3か月(60時間)の学習を想定した「『生活者としての外国人』のための日本語教育の標準的なカリキュラム」を作成中だ。ドイツでは1年以上滞在してもドイツ語能力の低い移民らに、600時間の語学教育を義務づけている。

 文化審議会会長で日本語教育研究者の西原鈴子さん(68)は、「日本語を母語としない人の割合はいずれもっと高くなる。そのときに混乱を招かないためにも、長期的な展望を持った言語計画とシステムが求められる」と話す。
(2010年3月3日 読売新聞)