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外国人の共生 言葉の壁高く

2010-03-04 09:25:23 | 多文化共生
(以下、読売新聞から転載)
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(1)外国人の共生 言葉の壁高く
「吐瀉物」「飛沫感染」「滲出液」など看護に関する難しい専門用語の読みを黒板に書くインドネシア人候補者ら(昨年12月24日、静岡県函南町で)

 外国人との共生へ歩み始めた日本。日本語教育の体制整備が急務だ。

 飛沫(ひまつ)感染、滲出(しんしゅつ)液、吐瀉(としゃ)物……。日本人講師が漢字の書かれた紙を黒板に張った。「この漢字の読みを書いてください」。インドネシア人の男女が前に出て、次々に書いていく。

 昨年12月24日、静岡県函南(かんなみ)町の研修宿泊施設、富士箱根ランド。経済連携協定(EPA)により、日本が2008年度に受け入れを始めた看護師・介護福祉士候補者インドネシア人2期生361人の研修が行われた。

 日本で正式に就労するには、看護師候補者は来日3年以内、介護福祉士候補者は同4年目に国家試験に合格することが条件だ。このため、初歩から始めた日本語の研修では、専門用語など高度な内容にまで及んだ。

 当初は全体の9割が日本語初心者だった。だが、朝8時から夜9時までの缶詰め講義に夜中までの自習体制のおかげで、日常会話はほぼ問題ないレベルになった。

 とはいえ、昨年度は、1期生の看護師候補者104人中82人が国家試験を受けたが、日本語という言葉の壁が立ちはだかり、全員不合格。全体の合格率は89・9%だった。

 2期生で看護コースに参加していた女性、シスカ・ヌルメナサリさん(25)は「『骨折』など漢字が難しい。音読みに訓読みもある。母国で看護経験は2年あり、インドネシア語なら合格の自信はありますが、日本語での受験にはもっと勉強しないと」と日本語習得の難しさを語る。

 研修にあたった人材派遣・教育事業会社の担当者(49)は、「国家試験独特の読解力習得が課題。研修終了後は、個々のがんばりに期待するしかない」と話す。

職員と仕事について打ち合わせをするディディさん(右から2人目)(2月18日、奈良県天理市で)

 「『認知症』と読めます、でも書くのはちょっと……集中研修中は漢字で書けましたが」と頭をかくのは、08年度来日の1期生男性、ディディ・スへディさん(25)。母国の看護大学を卒業後、半年間の事前研修を経て、昨年1月末から、奈良県天理市の老人保健施設「ならふくじゅ荘」で研修生として働いている。

 仕事は週5日1日約7時間、入浴や排せつ、食事の介助などをしている。試験勉強は仕事の前後の計2時間半で。国家試験を受けられるのは、2012年1月、1回きりだ。

 同施設では、ディディさんら研修生がインターネット学習を週3回、受けられるようにしたが、これだけでは試験合格は難しい、と急きょ施設スタッフによる週2日の学習指導も加えた。費用はいずれも施設の持ち出しだ。

 受け入れ責任者、岡田智幸さん(36)は「まず合格してもらいたい。日本を外国の人に助けてもらうのだから、施設お任せでなく、国は長期的・継続的学習支援を」と訴える。

 現場の声を受け、国も来年度以降、日本語学校通学の費用補助、再度の集団研修開催など具体的支援に乗り出す。

 安里和晃(あさとわこう)京都大学准教授(39)は「日本語能力や日本の医療事情に不案内な人材に対し国家資格取得という要件を課しておいて、確実に取得してもらうプロセスが欠如しているのは人材の使い捨てと指摘されても仕方がない。受け入れの展望を明確にした上で支援体制を整備しなければならない」と話している。(京極理恵、写真も)

 経済連携協定 物品やサービスの貿易以外に人の移動や投資なども加え、経済関係の強化を目指す協定。09年度からフィリピン人候補者受け入れも始まり、計310人が来日。27人は事前研修後、介護福祉専門学校で学ぶ「就学コース」に進む。
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公的な日本語教育 不十分

 外国人登録者数は1969年以降年々増え、2008年末で約222万人に及ぶ。一方、国内の日本語学習者は約16万7000人(同年11月)。入国後の公的な日本語教育は、義務教育を除くとほとんどなく、長期滞在しても日本語の読み書きがきちんとできない外国人は少なくない。

 文化審議会国語分科会日本語教育小委員会は、来日したばかりの外国人を対象に、最低3か月(60時間)の学習を想定した「『生活者としての外国人』のための日本語教育の標準的なカリキュラム」を作成中だ。ドイツでは1年以上滞在してもドイツ語能力の低い移民らに、600時間の語学教育を義務づけている。

 文化審議会会長で日本語教育研究者の西原鈴子さん(68)は、「日本語を母語としない人の割合はいずれもっと高くなる。そのときに混乱を招かないためにも、長期的な展望を持った言語計画とシステムが求められる」と話す。
(2010年3月3日 読売新聞)

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