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お前の1960年代を,死ぬ前にしゃべっとけ!(加納明弘,加納健太著)

2013-03-17 10:19:37 | 書評
前書きに紹介されているようにこの本はバリバリの団塊の世代で全共闘の中心的人物として何度も逮捕された加納明弘氏が肺がんであることが発覚した時点で息子である健太氏が,当時についてインタビューをするという本です。ちなみに父親は文筆業の人,息子はファンド会社の人ってことで,どっちの人の関連で書籍化されたのかはよく分かりません。有名な人なの?。

父親は私より20歳くらい上,息子は私より10歳くらい下のようです。10歳下だともう60年代の学生運動の話はまったく聞こえてないのでしょうか?。学生運動が盛んだったのは私がまさに生まれた頃の話だと思うのですが,不思議なことに,小さい頃からその話は聞こえてました。私が中学くらい…というと,もう学生運動からは10年くらい後でしょうが,その頃から聞き始めたフォークソングとかを逆順に辿っていくと,どうも学生運動にぶち当たる…そんな感覚がずっとありました。反抗期に入りかけたわたしは,大人への反抗の形の手本として,そういうものに憧れを持っていたかもしれません。

私の世代はやがて新人類と呼ばれる人たちの直前で「ノンポリ」とか言われたこともあったけど,要は政治的無関心の最初の方の世代です。でも,まだどこか大人に反抗することに対する憧れがあって,高校に入って学生で集まってがやがややるのが楽しかったけど,何も戦う相手が見つからないというもやもやしたものがありました。大学に入り社会に出て,そういうものがなくなりましたが,実際学生運動を戦ってきた人はどういう人で何を考えていたのだろう?…というのは,興味の片隅にありました。というわけで,今回この本を読みました。

対談形式ですが,父親がライターだからか,話が明晰で情報量も多く結構読みやすかったです。やはり学生運動の時代の話は実体験だけあって迫力があります。当時の日本の社会がベトナム戦争への日本の関与をどのように捉えていたかとか,太平洋戦争に対する罪の意識をどういう風に持っていたか…というのは,なかなか本などでは書かれてない話で面白かったです。あと学生運動の組織とかの話も,今となってはどうでもいい話なんでしょうけど,面白かったです。昔から全共闘とかセクトとか,言葉だけ知っていて意味は分からなかったので。

父親の明治からの世界の力関係に関する歴史認識は,さすがに筋は通ってるのですが,でも世間一般の認識とずれがあるのは興味深いと思いました。さすがに東大生で学生運動をやっていたわけですから,頭はいいわけです。でもこの人最終的にアメリカのシステムが優れていると言ってるんですよ。その理由がきちんと「間違っていた」といえるからと。あぁ確かに日本のみならず,どの国も間違いを認めるってことをなかなかできません。でもアメリカはわりとよくやる…。それは強みかも知れないなぁとは思います。

さて,この本の元となるインタビューがなされて5年経ちますが,どうやらこの父親の人,ご存命のようです。それはとてもよいことだと思いました。しかし父親の先が短いと思っても,なかなか親子で親の昔話とか聞けないものです。私も自分の親に戦時中の話とか聞いてみたいと思ったりもしますが,もう無理だろうなぁ…とか思います。そういう意味では学生運動の話も面白かったのですが,こういう本が出せること自体,よい事のように思いました。
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