森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

オニウシ公園

2021-05-04 | 日記


 「オニウシ」とはアイヌ語で「木がたくさんある所」です。
 森町の名前の由来も「オニウシ」からきたものだそうです。
 ここのすぐ近くに「青葉ヶ丘公園」があって、この二つはともに桜の名所と
 なっています。
 自分は勝手に、桜の「ツインパーク」と呼んでいます。
 多種で多数の桜が時間差で次々と咲いていくから、一か月近くもの間、楽し
 むことができます。うれしいですね。



 森町にはかって、ここと室蘭を結ぶ「森蘭航路(シンラン)」がありました。
 明治になってすぐに始まり、半世紀以上もの間、人と貨物を運ぶ噴火湾の貴
 重な輸送航路でした。
 その時のようすは、かのイザベラ・バードさんの『日本奥地紀行』に書かれて
 います。森の街中のことも少しですがでていましたね。



 また宮沢賢治さんの詩にも登場します。
 彼が出版した生涯唯一の詩集『春と修羅』のなかの「噴火湾(ノクターン)」
 です。
 彼は妹トシを亡くした翌年、花巻から樺太へ旅立ちます。
 その帰り道に、列車が噴火湾を回って森町辺りにさしかかったときには、もう 
 日が暮れかかっていたようです。
  ……
  噴火湾のこの黎明の水明かり
  室蘭通ひの汽船には
  二つの赤い灯がともり
  東の天末は濁つた孔雀石の縞
  黒く立つものは樺の木と楊の木
  駒ケ岳駒ケ岳
  暗い金属の雲をかぶつて立つてゐる
  そのまつくらな雲のなかに
  とし子がかくされてゐるかもしれない
  ……
 トシの魂と交信するような詩を書いた5年後(1923年)に、森蘭航路は
 廃止されています。残念ですね。


 
 オニウシ公園の桜はコロナとは無縁に、見事に咲いていました。
 来年こそは大勢の花見客で賑わう「ツインパーク」でありたいですね。