この小屋から二つの山が見えます。
北に北海道駒ケ岳、南に横津岳です。
今は二つとも、ただ真っ白く大きな塊になっているから、背景が青空でもない
限りは形はよく分かりません。
ともに1000mを超える山ですから、この辺りでは高い山といえます。
駒ケ岳は北海道百名山に名を連ねていますが、横津岳はなぜかここに入って
いません。
たぶん、選定した人の山形の好みなのでしょう。
駒ケ岳は全国に20山ほどあるそうです。
中でも有名なのは、南アルプスの甲斐駒ケ岳と、中央アルプスの木曾駒ケ岳
です。ともに3000mに近い山で、古くから修験道の人々の聖地です。
近くは青森県の十和田湖の辺りにも、大駒ケ岳があります。
一方横津岳は、日本中にただ一つだけの山です。
朝夕に二山を眺めていると、雪の降る日はもちろん見えませんが、雨の日に
は上の方は雲に覆われて、その下だけが八の字に広がって、面白く見えたりし
ます。
晴れた夕暮れには、真っ赤に燃えます。時には大きく見えたり、小さくポツン
とした淋しい感じの日もあります。
そして不思議なことに、稜線のどこかに、先に逝ってしまった人々が小さな
集団をつくって、静かに暮らしているような感覚になります。
宮沢賢治さんも『春と修羅』の「噴火湾(ノクターン)」の中で
黒く立つものは樺の木と楊の木
駒ケ岳駒ケ岳
黒い金属の雲をかぶって立ってゐる
そのまつくらな雲のなかに
とし子がかくされてゐるかもしれない
と書いています。
あれほど敬虔な法華経徒だった人なのに、噴火湾にいきなり立ち上がる駒ケ岳
を望み、思わず仏よりも、日本人の自然神思考が湧きだしたのでしょう。
しかし、知る限りでは駒ケ岳にも横津岳にも神山霊山伝説は伝わっていません。
いや、そもそも古くから北海道の我々には、山に信仰を求める精神性はなか
ったのです。
それはアイヌ文化に、弥生の稲に係わる生活がなかったからだと思うのです。
そんな、山の見える場所が気に入って、もう長く暮らしています。
2020年が終わります。
自分としては、コロナ禍にあっても、山奥の利を活かして仕事は継続できたし、
すばらしいクラフトのお手伝いもできました。
また、ボランティア活動の新しいフイールドも開かせていただきましたし、例年
より遥かに多くの本を読むことができました。
みなさんに心より感謝いたします。
さあ、来る歳はどんな歳なのでしょう。
ワクチンが届くのを心待ちにしながら、生かされていることに応えていきたい
と思います。
よいお歳を!
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