森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

ユキ

2015-08-01 | 日記


 ユキと出会ったのは去年の十二月の初めでした。月が替わって
直ぐに大雪が降り、そのあとのことです。
 駅前の真っ白な雪道の轍を、こちらに向かって歩いてくる小さ
な動物がいました。「キツネかな? それにしては小さいし色も
違う」立ち止まって見ていると、近くになって「あっ、猫だ!」
と分かりました。それがユキです。
 ユキは近づいてはきたものの、ある距離を保ち、じっとオッチ
ャンの様子を伺っていました。「お腹が空いているんだ、食べ物
を探しているんだな」と直ぐに分かったけれど、オッチャンは食
べる物など何も持っていません。
 ユキも本能的にそれを察して、サッとどこかへ消えてしまいま
した。今よりはかなり小さかったから、まだ子供だったのです。



 その日から、この無人駅や駅前通りで時々ユキを見かけるよう
になりました。
 「どこから、どんな訳でここへ来たのだろう」と、いつも思う
のですが、もちろん誰にもわかりません。たぶんユキ自身も分か
っていないのでしょう。



 そしてユキはがんばりました。とうとう雪の中で一冬を越した
たのです。今は時々食べ物をくださる人もいて、落ち着いた夏を
送っています。体も大きくなって、体力も付いたから今年の冬は
去年より楽でしょう。
 この先ユキにはどんな運命が待っているのだろう。オッチャン
にはまったく想像できません。
 とにかく、ユキの一生は始まったばかりなのです。


   動(yurugi)