瀬崎祐の本棚

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詩集「鳥たちのように」  おしだとしこ  (2012/09)  土曜美術社出版販売

2012-10-19 20:51:51 | 詩集
 個人誌「翔」を発行している作者の第8詩集。107頁に27編を収める。
 ひっそりとしたたたずまいの詩集である。「しっぽ」は、「背骨のとぎれたあたりに/小さな丸い骨が突き出ている」ところは、「しっぽが/ちょん切れたあとだと 教えられ」たことからはじまる。

   長く生きていると
   知られたくないことだって
   ひとつや ふたつ いやもっとあるから
   しっぽを出したぞ! だれかが叫ぶと
   しっぽのあたりが気になって仕方がない

 容易に共感できる感覚をユーモラスにとらえている。しっぽを掴まれては恥になるので、「しっぽを巻いてユメのなかへ逃げ込」んだりする。妙な自尊心のある人間はそうするのだが、愛犬は「浅はかな飼い主をあざ嗤うように」「だれそれ かまわず/しっぽを振る」のである。自虐的な皮肉につい苦笑してしまう。
 嫁入りの品にと、母が織り上げてくれた着物を詩った作品「ぬくもり」。
 いつしか自分がその母の齢になっているのだが、それでもその着物は「さむざむとしたココロをつつんでぬくとい」のだ。
 作品のどこにも他者に対する悪意がない。そこが軽い気持ちを保ったままで読める所以であるのだが、読者と作品とが喧嘩をする部分がないので、なにがしかの物足りなさを感じてしまう所以にもなっている。
コメント (2)
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