瀬崎祐の本棚

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詩集「闇の割れ目で」  浜江順子  (2012/09)  思潮社

2012-10-11 19:19:30 | 詩集
 第6詩集。119頁に25編を収める。
 作品は固い言葉でおおわれており、醜いものをこれでもかと突きつけてくる。それは卑猥なものであったり、煩雑なものであったり、汚濁なものであったりする。私たちが無意識のうちに避けようとしてしまうものを、意識的に探し出しては検証している。そこから初めてあらわれるものが作者には必要だったのだろう。

   魚は陰部の泉にゆっくり放たれ
   酸欠にあえぎながら
   香油を湿らせた中心部をいまにも食いちぎろうとしている
   自らの美貌をうまく飼いならしても
   世界はコトリともせず
   宇宙の車輪を空回りさせるだけだ
                       (「ヘリオガバルスの汁」より)

 作者は「痛みが着地するところはどこだ?」(「すりぬける」より)と探している。”闇の割れ目”にすでにいるのだろうか。それともそこで起こることを構築することによって作者自身の”闇の割れ目”を造りあげようとしているのだろうか。

   ああ、良く寝た日だったとつぶやいたそば
   から睡魔は砂時計のように指からこぼれ
   おち、突風に加担していく。陰謀も無謀も
   はらはらと美しく宙に舞い、奇妙なリズ
   ムで侵入を図るのだが、外では一滴も流
   れない血が、底の内部ではどくどくと孤
   独に流れている。
                       (突風の底へ」最終部分)

読んで愉しくなるような作品では決してないのだが、それでも書きつけて突きつけてくる重さを、確かに感じる。
コメント
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