瀬崎祐の本棚

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詩集「王国記」  植村勝明  (2012/10)  土曜美術社出版販売

2012-10-03 21:48:40 | 詩集
 第6詩集。111頁は「王国記」「わが神学」の2章に分けられ、合わせて41編の散文詩が収められている。
 作品は、「計死官」「修道士」「預言者」などこの王国を維持する役職や人々についてのもの、「祈りの場所」「修道院」「優しい因習の村」など場所についてのもの、さらにはこの国での「希望」や「罪」についてのものまである。
 ”王国”は一つの構造体であり、構造体は規則によって成り立つ。ここには完結した規則を造りあげようとする執拗な目論見がある。それによって成り立つ王国をめざしている。
 「閏月」では気候が変じて寒さが長く続いたので、暦官に命じて寒い三月を二度繰り返させた時の王がいた。彼は賢王と呼ばれたのだが、

    王はほどなく暗殺された。釈放がその日までひと月延び
   た囚人の刃で。世の中には早く三月も四月も過ぎ、いっそ
   のことふた月がひと月になればと願っている人もいる。王
   はそのことに関して統治者として遺漏があったのであり、
   逆恨みとは言えない。

 この詩集の試みは面白く、後半の”神”についてさまざまな方向から眺めた作品はユニークでもある(二軒の並んだ家に住む神について書かれた「家鴨」はあまりに面白くて笑ってしまった)。
 ただ、構造を詳述しようとすればするほど、その意識は理屈を必要としてくる。そのために次第に作者にとっての生々しさが失われていってしまう。どこかよそよそしいことが残念だった。
コメント
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