瀬崎祐の本棚

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評論集「谷川俊太郎全《詩集》を読む」 山田兼士 (2023/12) 思潮社

2024-01-01 00:31:07 | 詩集
一年前に亡くなられた山田兼士氏の遺稿をご家族が出版されたもの。203頁。
「序」は山田氏ご本人だが、「あとがきに代えて」はご子息の山田聖士氏が記している。

山田氏はボードレールをはじめとするフランス文学が専門であったようだが、それと平行して谷川俊太郎についても熱心に論じていた。
谷川についての詩論集としては2010年に「谷川俊太郎の詩学」(思潮社)を出しているが、本書は1952年から2021年までに谷川が出した66冊の詩集を経年的に紹介している。

谷川の第1詩集はもちろん有名な「二十億光年の孤独」である。これは1952年の出版で谷川20歳の時となるが、作品は18歳から19歳のものとのこと。
「高校卒業後の息子の行く末を案じた父谷川哲三が、息子のノートに記されてた詩を、三好達治に読ませた」ことから詩集刊行に至ったとのこと。

本書はこのようにそれぞれの詩集の谷川世界の中での位置を分析紹介して、その詩集がになっている意味を探っている。
それぞれの詩集からの作品の引用紹介もふんだんにおこなわれている。部分引用もあるが、全行紹介が多いのも大変に嬉しい配慮である。

本書の構成はほぼ10年ごとの6つの章立てになっており、1952-1969は「はるかな国から詩の前線へ」であり、最後の2010-2021は「未来の詩人の行方」であった。

本書はこれからあとに谷川俊太郎について論じる人は誰でもが参照する書になるのではないだろうか。

2013年刊行の「ミライノコドモ」所収の詩「時」には「物語には終わりがあるが詩に終わりはない」という一行がある。
山田氏は「なんとも普遍的な一行ではないか」と評しているが、山田氏の残された業績にも終わりはないと思える。
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