瀬崎祐の本棚

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エウメニデスⅢ  42号  (2012/03)  長野

2012-03-05 13:05:29 | 「あ行」で始まる詩誌
 小島きみ子の個人誌だが、今号では自分の作品の小特集を組んでいる。
 その内容は、詩、「タッチ」と題した二人の人物の往復書簡(全くの架空のものなのか、それとも小島が某と実際におこなったものなのかは不明)、「詩の精神ノート」と題した14頁に及ぶ覚え書きのようなもの、詩人モーリス・メーテルランクの戯曲に関するエッセイ、と豊富である。彼女の旺盛な表現意欲に感服する。
 「詩の精神ノート」のなかにとても惹かれる部分があった。食品の買い出しに行くスーパーを変えてみたという何気ない日常のことからはじまるのだが、見えた風景から彼女はふいに次の言葉を探りあてる。

   詩とは見えない空間に生きることです。
 
 直感的にあらわれてきたようなこの一文になるほどと思わされた。現実の世界で買い物をしている自分と、詩の世界に遊離していく自分が端的に捉えられている。詩人はもう一つの世界で確かに生きているのだ。これにつづく文章は、

   空間を見えるようにすることは、数値で示すことです。数値とは何だと思いますか。数値
   とは、時間の形式です。これをどうやって言語に与えればいいと思いますか。言語に形式
   を与えること。それは言語背景に詩の論理を持つことだと思う。

言葉は空虚なものではない。そこには形があり、論理がある。だから言葉によって成り立つ世界も形を持ち、論理を持っているのだと思う。数値で示されるということは、形作られる空間は計れるものでもあるということだろう。
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