瀬崎祐の本棚

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詩集「川岸の道」  御庄博実  (2013/07)  思潮社

2013-08-27 21:11:39 | 詩集
 93頁に17編を収めるが、内の4編は既詩集に収められていた作品の再収載となっている。
 著者は一貫して原爆が投下された広島に居続けている。被爆者の一人として、またその医療に携わった者としての立場からの作品を書き続けている。この詩集では、その広島に東日本大震災、そして原発事故の情景が重なってきている。
 TVの映像に映ることは一度もなかったが、東日本大震災の現場では瓦礫を取り除いた下のいたるところに死体があったはずだ。見えるべき事態も私たちには見えなかったし、さらに見ようと思っても見えない怖ろしさを持った事故が、それに続いたわけだ。著者はそれらの怖ろしさを見続けようとしている。
 そして60年安保の国会突入デモ時に亡くなった樺美智子さんを詩った「ある少女の死」。著者は医師としてその遺体を確認しているのだ。

   警棒様の鈍器で 激しく腹部を突かれ
   膵臓頭部が挫滅 出血
   慶応大学法医学部で見た「血に染まった膵臓」
   ほとんど瀕死の少女の
   のど笛にさらに薄い扼痕があった 
   指で首を絞めたとどめの跡だ

 東日本大震災での損傷の激しい遺体を修復する納棺師を詩った作品「納棺師」や、未だに行方不明のままの人たちを探し続ける潜水ボランティアを詩った作品「探す」も印象的であった。
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