詩と思想新人賞を獲っての第1詩集。118頁に30編を醒める。
「黄色の先へ」。海際の信号機が黄色く点滅している。誰でもが、ほとんど人も車も通らない道での点滅信号を見たことがあるだろう。その点滅の意味を何となく考えたこともあるだろう。街中であればそれは「注意せよ」なのだが、海際では「注意して、進め」なのだ。そして、
船でも、波に乗るでもなく
黄色い許しと
飛び越す己の脚力だけで
深く広く横たわる巨大な質量を
越えていきたいのです
目の前に広がるのが海であるならば、黄色い点滅は「注意して進め?/いいえ//おもむくままに、進め」なのだ。堅苦しさに縛られた常識の約束事を振り捨ててしまいたいという思いが伝わってくる。
「無花果」。無花果は実を支える皮が頼りない柔らかさで、指にまとわってくる粘つきをともなっている。そんな無花果の実りに重ねて、少し妖しい自分のなかに在るものを探っているようだ。
太陽の名残を閉じ込めた皮は、経血の濁り色。べたつく果実を、小
さな孔から引き裂いて割って、顔を埋めて、来年の実を待てないわ
しが、今度は甘く熟す番だ。緑の手の中で、花咲かぬまま大人にな
る。
作者はこれまで詩と思想、日本現代詩人会、月刊ココア共和国などで投稿をしてきた。そこでさまざまな選者と出会い、精進を続けてきた。示唆を受け、また反発を感じたこともあっただろう。本誌集はそれらの集大成としての意味もあるに違いない。そしてこれが次のステップへの出発点である。
「黄色の先へ」。海際の信号機が黄色く点滅している。誰でもが、ほとんど人も車も通らない道での点滅信号を見たことがあるだろう。その点滅の意味を何となく考えたこともあるだろう。街中であればそれは「注意せよ」なのだが、海際では「注意して、進め」なのだ。そして、
船でも、波に乗るでもなく
黄色い許しと
飛び越す己の脚力だけで
深く広く横たわる巨大な質量を
越えていきたいのです
目の前に広がるのが海であるならば、黄色い点滅は「注意して進め?/いいえ//おもむくままに、進め」なのだ。堅苦しさに縛られた常識の約束事を振り捨ててしまいたいという思いが伝わってくる。
「無花果」。無花果は実を支える皮が頼りない柔らかさで、指にまとわってくる粘つきをともなっている。そんな無花果の実りに重ねて、少し妖しい自分のなかに在るものを探っているようだ。
太陽の名残を閉じ込めた皮は、経血の濁り色。べたつく果実を、小
さな孔から引き裂いて割って、顔を埋めて、来年の実を待てないわ
しが、今度は甘く熟す番だ。緑の手の中で、花咲かぬまま大人にな
る。
作者はこれまで詩と思想、日本現代詩人会、月刊ココア共和国などで投稿をしてきた。そこでさまざまな選者と出会い、精進を続けてきた。示唆を受け、また反発を感じたこともあっただろう。本誌集はそれらの集大成としての意味もあるに違いない。そしてこれが次のステップへの出発点である。
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