瀬崎祐の本棚

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「59」 22号 (2020/11) 北海道

2020-11-24 18:39:39 | ローマ字で始まる詩誌
1959年生まれの3人が集まっている詩誌。24頁で、それぞれが詩1編と論考やエッセイなどを書いている。

金井雄二は「菅原克己が「死の灰詩集」論争で得たもの」を書いている。当時、この詩集については賛否両方の意見があったようだが、鮎川信夫はかなり鋭い批判の文章を発表している。その論に対して菅原克己は強く反発したのだ。しかし金井は、「菅原は鮎川の意見に、真実を見てしまったのではないだろうか?」と推測している。これまでも金井は菅原克己論を書いてきているが、この論考も菅原克己を親身になって捉えようとしていることがよく判るものだった。

「大学」伊藤芳博は、下宿の階段を上がるときに「タタタタタッ」と追い越されたというもの。そしてその頃の大学では「それまでの自分と/それからの言葉が/螺旋の段々を追い越したり/追い越されたり」していたのだ。最終連では、追い越したり追い越されたりした「タ」が言葉に染みついている。

   欠けタところには
   いろいろなヤツがやっタきて
   ときには(タが
   自分やこタばを
   信じないでよい日もあタッ

訳の分からないユーモアがあり、楽しい作品。

その伊藤の連載「詩を読む21」では新保啓の詩集「朝の行方」からの作品が紹介されていた。寡聞にしてこれまで新保啓の作品は知らなかったのだが、こんなに好い詩を書く人がいたのだと教えられた。感謝。

岩木誠一郎のエッセイ「最後の一曲」は、人生の最後に何を聴きたいかというもの。ロック好きの岩木はある曲を挙げていたのだが、困ったことに、「その曲を聴きながら人生の終わりを迎えたいと言ったことが自分に暗示をかけ、その曲を聴いている内に死ぬのではないかという強迫観念にとらわれ」て、その曲を聴くことができなくなったという。オチの付いた見事な結びは、

   このことを教訓として「人生の最後に読みたい一編の詩」については、絶対に決めないで
   おこうと思う。

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