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詩集「ロジカル・パイン」 南久子 (2024/10) 土曜美術社出版販売

2024-11-12 18:15:47 | 詩集
第3詩集。114頁に28編を収める。

「彼岸を過ぎるころになると」。太陽があたったり、北風が吹き荒れたり、そんななかで「ときどき姿勢を正す」。それは特別なことではなく自分の内側から無意識のうちに出てくるものなのだろう。

   ことばがつながると
   まもられているのが肌をつたう
   いっしょに夢を見る
   幻想しつづけるのはいや
   尖って転がるのはもっといや
   託するものが見つけられなくてもぎりぎりセーフ
   納得して横たわる

なんでもない時に自然に湧いてくるものがあって、そんなものに自分は護られているのかも知れない。そうして季節も移ろっていく。最後は「だからこうしてちゃんとしている」。自分に言い聞かせているようなモノローグである。それはもうひとりの自分への言い聞かせなのかも知れない。

「あたらしい島で」では、話者はどこか南の島にいるようだ。そこでグラスボートからウミガメを見ている。おそらくそのゆったりとした大きさに、悩み事を抱えていながらもそれが緩くほどけていくような気持ちになったのではないだろうか、。

   甲羅の上から見つめられることに
   慣れていて
   嘘さえつかなければ許してくれそうだ
   わたしたちがいつもそう願ったように
   とても好きだ

最終連は「この島にたずねよう/わたしたちは/どのようにして別れるのか」。その別れとは、この島とのことなのか、それとも話者と相方とのことなのか。明日はあたらしい島へ旅立つ日になるのだろうか。

本詩集は3章に分かれているのだが、Ⅱ、Ⅲと進むにつれて話者は他者との関係の中で存在するようになっていく。あとがきには「破綻し尽くせるのに、いつの間に繕い始めている」とあった。これからも揺れうごきながら言葉を発していくのだろう。
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