瀬崎祐の本棚

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詩集「ときのおわり」 山田リオ (2023/04) 青磁社

2023-05-07 00:03:43 | 詩集
第一詩集。93頁に27編を収める。
あとがきによれば、病が次第に悪化していった作者は臓器移植手術を受けて命をつなぐことができたとのこと。この詩集に収められた作品はその臓器移植手術にいたる8年間と術後の4年間に書かれている。常に自分の命、それは死と言ってもいいのかも知れないが、それと向きあった日々の中で書かれた作品といえる。

冒頭の「ときのおわり」は、「ときのおわりがくるひに/うでどけいをすてた」と始まる。そこは「からっぽのせかい」で話者はどんどんとあるき、

   とうとうせかいのおわりまできた
   ときのおわりのひに
   せかいのおわりは
   がけになっていて
   そこから
   すべてのそらがみえた

話者はそのがけのふちにすわってそらをみているひとにあうのである。自分が終われば世界も終わるのか、それとも、自分の終わりには無頓着に世界は続くのか。そのような想いは誰にでもあるだろう。そのどちらであっても、そのときのおわりにはただ空を見ているのが正しいことであるようだ。

「夢」はタイトル通りにいつも見る夢の話。話者の夢は、「小さな駅から/海に向かうバスに乗る」というもの。しかし、いつも夢は途中で終わってしまう。夢のなかのバスはその先には連れて行ってくれないのだ。

   いつか
   わたしの肉体が死んで
   朽ち果てて
   土に還ってしまっても
   それでも
   こころはきっと
   あの小さな駅から
   海に向かうバスに乗るだろう

海に向かう道はまっすぐなのだ。そのときになれば、わたしはもう夢からは帰ってこないのだからバスはどこまでも走り続けてくれるのだろう。

この詩集のどの作品も、生きている自分は何をしていれば好いのかと問いかけている。それは、やがて生きていないことになるであろう自分からの問いかけでもあるようだ。
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