はぐれ遍路のひとりごと

観ながら歩く年寄りのグダグダ紀行

四国遍路34日目

2018-04-15 10:00:00 | 四国遍路
          
                         88番 大窪寺

                     結 願(34日目) (2003/4/15)

 宿(7:20)→長尾寺(87)→大窪寺(88)→宿(16:00)    32.8km

 気を引き締めなおして結願の日の旅立ち。
これからのコースは女体山経由で88番に行き、88番からは四国88ヶ所総奥の院といわれる與田寺を参拝してから
1番霊山寺に戻るコースとした。

一般的な88番から10番の切幡寺に抜け、行きと同じ道を1番に戻るコースは上り少なく歩きやすいらしい。
一方與田寺廻りは大坂山越と卯辰越といった難所を越すコースらしい。
まだまだ歩く体力は十分残っているが、いざ88番近くなり気が変わって、楽な切幡寺廻りにならないとも限らないので、
今日の宿は切幡寺分岐を大分過ぎた所にある白鳥温泉に宿を予約してある。ここなら與田寺に行かざるを得ない。

 87番長尾寺も過ぎ静かな車道を歩いていると “遍路館” の案内があり、そこには接待所も併設されているらしい。
是非寄ってみたいと思うのだが、場所が女体山コースにあるかどうか分からない。
女体山コースは今歩いている車道と別れ、ダム湖の対岸を歩くようになっているが、遍路館はどちらにあるのだろうか。
不安を感じながら歩いていたら、対岸への分岐点に気がつかないまま、ダムまで来てしまった。
だがそこには女体山コースはダムの上を通って行けるとあったが、そうなると遍路館は諦めるしかないらしい。
と、思ったら、一つの看板にマジックで小さく 「遍路館経由でも女体山へいけます」 と書いてあった。
悪戯書き? とも思えるような感じもしたが、その言葉を信じて遍路館にお向かう事にした。

 程なくすると新しい立派な建物の遍路館が見えてきた。
遍路館では展示物を見たり、お菓子やお茶の接待を受け思いもかけず長居をしてしまった。

 ダム湖が終わる辺りで女体山コースに向かう対岸から来た遍路道と合流した。
そこからの道は車も殆ど通らない細い道になり、やがて山道となってのんびり歩けた。
途中蕨も生えていて何本か採ったが、今晩の宿は白鳥温泉とあるだけでホテルなのか旅館なのか分からない。
民宿のように家庭的でないことは確かだと、採った蕨は捨ててしまった。

 蕨以外にもイタドリ(虎杖)もあった。こちらのイタドリは静岡の山にある細いイタドリでなく、大人の親指より
太く、折るとポッキと音がして筋も引かずに折れる。皮を剥いて食べると酸味があるが苦味は少ない。
これが静岡の細いイタドリだと、筋っぽいし苦くて吐き出さずにはいられない。
子供の頃は食べたのに不思議に思っていたが、昔は静岡でもこんなイタドリだったのだろう。

 女体山の山頂近くの岩場からの眺めは良かった。
今日は遠くに見えるあの海からここまで歩いたのだと思うと我ながら感心をしてしまう。
言い古されているが、一歩一歩は小さいが、それが積み重なれば偉大なものになることを実感できる眺めだ。

 歩き始めて最初に見た海は23番薬王寺からの紀伊水道の海で、土佐では常に太平洋がついてまわり、
伊予では霧の中の豊後水道だった。58番仙遊寺では瀬戸内海としまなみ海道が一望できた。
そしてここ讃岐の女体山では播磨灘を望んでいる。何事も挑戦すればできるのだとしみじみ思った。
長年のサラリーマン生活で、すっかり衰えたと思っていた体力に改めて自信を持った。

山頂から奥の院経由で行く大窪寺には、急な下り坂を下るとアッと言う間に着いてしまった。

 いよいよ夢にまで見た結願(けちがん)だ。
車遍路の時は感激して目も潤み鼻声で家に電話をしたが今回は--------

そんな馬鹿な! 今までお参りしてきた87ヶ所の札所と同じ感激でしかない。
涙も出なければ鼻声にもならない。そんな馬鹿な! 
何故だろう? まだ歩き足りないと言うのか? 感激しない自分に腹がたった。

 ここ大窪寺では88ヶ所を打ち終わった遍路が金剛杖を奉納する慣わしがあると言う。しかし私は奉納しない。
明日も歩かなければならないが、次回の遍路の時もこの杖と白衣、菅笠は使いたい。
また自分が死んだ時はお棺の中に入れてもらいたいと考えている。

 歩き遍路の多くは88番の前にある民宿八十窪に泊ると言う。
今も何人かのお遍路八十窪の前で話しているが、今晩この八十窪は満員だと話しているようだ。
歩いていると殆ど会わない歩き遍路なのに、打戻しとか、このような場所になると増えてくる。
今日も歩き遍路らしき人とは長尾寺で一人、遍路館で一人、そして山頂の岩場で二人と計4人会っただけだ。
線路が平行で永久に交じ合わないように、遍路も同じような早さだと、いかに会う事が少ないという事だろう。

それにしても早まったと感じた。
この宿へ泊るお遍路さん達はきっと夕食の時など遍路の苦労話に花を咲かせるだろう。
そんな色々な人の話を聞きたかった。私ならきっとトンネルの恐怖を喋ったに違いない。

それが今日の宿の白鳥温泉はまだこの先10kも歩かなければならない。トホホ------

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