はぐれ遍路のひとりごと

観ながら歩く年寄りのグダグダ紀行

四国遍路28日目

2018-04-09 10:00:00 | 四国遍路
                  お接待(28日目) (2003/4/9)

 宿(6:00) → 宿(16:00)             39.1km

湯之谷温泉は日帰り入浴で賑わっていた。風呂も混雑していたが周りの話を聞いているだけで楽しい。
地元の人の言葉の終りが高くなるイントネーションが優しく感じる。
話の内容から客は近在の人で銭湯替り温泉に来ているようだ。
被災振りの広い浴槽でいつでも入れる温泉は気持ちよく疲れが体の底から抜けていくようだ。

 朝の出発は6時。ここは遍路宿ではないので朝食は7時過ぎとのこと。
仕方ないので朝食を断り玄関の鍵を自分で開けて出発。

今日のコースは国道11号沿いを、ただただ39k伊予三島まで歩くだけで途中に札所も番外もない。
室戸や足摺のように鯨や綺麗な名所も無く、ただただ歩くだけ。
楽しみは・・・・考えてみたが何も思い当たらない。

湯之谷温泉から国道に出てコンビニを探しながら歩いていると
 「おはようございます」 と自転車の女性が声を掛けて追い抜いていった。
このようにはっきり声を掛けてくれる人は珍しく、殆どの人は無視というか自然の状態だ。たまに横を向かれることもあるが、
それも仕方がない。いい大人が金をかけ暇そうにテクテク歩いているのを見れば腹がたつ人もいるだろう。
分かっている積もりだが、このように声を掛けられると嬉しくなる。

 先方にコンビニの看板を見つけ、やっと朝飯にありつけたと入口に向かう。
中から先ほどの自転車の女性が私のほうに向かって来て言った。
 「私も戦争反対です。気を付けて行ってください」 とお茶とパンを差し出した。
例の如く 「有難うございます」 くらいしか言えず、後は口の中でモグモグしている自分が悲しい。
女性は自転車で走って行ってしまったが、久し振りに背中が熱くなった。

最初こそ 「戦争反対!!」 のワッペンが気になったが、最近では慣れてしまい付けているのも忘れてしまうこともある。
でも、反響があった。嬉しかった。

 国道は交通量が多く、歩いていて車の音がやかましい。それではと旧国道を歩くと今度はクネクネ曲がっていて遠回りになる。
仕方なく気分に任せ国道を歩いたり旧道を歩いたりしていた。そんな時また女性に声を掛けられた。
 「少ないですがお賽銭の代わりにして下さい」 と70円の接待をしてくれた。

 今まで何度もお接待してもらったが、その全ては女性で男性は一人も居ない。
やはり同性には厳しくなるものだろうか、それとも私を含め男には親切心が少ないのか?
若し自分が四国の住民であっても、遍路に対し横は向かないが挨拶も接待もしないだろう。仕方がない事だ。

 国道の上り坂をエッチラコッチラ歩いていると後ろから来た車が横に来て停まった。
助手席の窓が開き運転をしていた男性が 「お遍路さん車に乗りませんか」 と声を掛けてくれた。

ヤバイ! これは断らないと。それも相手の気を悪くしないように。
 「有難うございます。申し訳ございませんが1番から車に乗らずーと歩いてきましたので、このま88番まで歩き通したいと
思っています。申し訳ございません 「そう。それじゃ気をつけて頑張ってね」 」
と車は走り去った。

口下手の私としてはうまく言えた。きっと気を悪くはしなかっただろう。
どうかまたお遍路さんに声を掛けてやってください。お願いします。やはり男性も親切な人は親切だった。

 お接待の話が続いたのでもう一つお接待の話をする。
それは今日の話ではなく讃岐での事なのだが、場所が分かるとその店に迷惑がかかるといけないので今話しておきます。

一度は本場のチャンとした店の讃岐ウドンを食べようと、入った店は客が一杯でカウンター席が一つしか空いていない。
ザックに菅笠に金剛杖とかさ張る荷物があるので、本当はすいている店が良かったが仕方ない。
荷物をなるべく邪魔にならないようにして、ざる饂飩とおろし饂飩を頼んだ。食べ終わって勘定を頼むと会計の女性が
 「お接待しますので結構ですよ」 と言った。吃驚して
 「あの二杯も頼んでしまいましたので、せめて一杯分は払わせて下さい」 とお願いすると奥から主人と思われる男性が
 「うちは歩きの遍路さんには、お接待する事にしているので遠慮しないでいいよ」 と声を掛けてくる。
会計の人も 「旦那がああ言っていますので結構です」 とまた言ってくれた。
胸が熱くなり瞼がジーンとしてきた。小さくなる声を振り絞って 「有難うございます」 と一礼して店の外に出た。
そして店の入口に向かって再度深々とお辞儀をした。

 今日の宿は旅館。
襖越しの隣の部屋は車遍路の女性二人が6時頃着いて、それからずーと話のしずめ。
明日は36kで山を二つも越えなければならない、しかも雲辺寺は88ヶ所の中で標高が一番高い札所だ。
当然早出となるので早く寝なければならない。隣が煩いなと思いつつ8時頃には寝てしまったようだ。

しかしまた例により3時ごろ目を覚ます。それからは30分置きぐらいに目を覚まし、うつらうつらの状態が続いた。
この半睡半覚が疲れの原因かと毎日悩んでいたのだが、それがヒョンな事からある事に気がついて安心した。
だって夜8時に寝て朝3時に起きれば7時間。それから半睡半覚で2時間寝たとしても9時間。
毎日このくらい寝れば朝3時頃に目を覚めるのは当たり前の事だ。
それに気が付き急に気が楽になった。


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