富士箱根トレイル1回目―3 歩行月日2011/11/3
思惑通りなら4時50分には小山駅に着くだろう。
その時刻なら日没時間は過ぎているが、まだ明るさは残っているはずだとか、今日の距離は短く、明るい時しか歩かないと思い、懐中電灯を持ってきていない。だが若し山道で暗くなってしまったらと弱気の虫も湧いてくる。
尾根を行くか林道にすべきか。思案六筒、
下手な考え休むに似たり だが。
エ―イ!尾根伝いの不老山経由で小山駅に行こう。
湧きあがる不安を抑えて不老山に向かう事にした。時間は13時だった。
明神山で食事中の親子連れに会ってから誰とも擦れ違わなかった。これから先も人には会いそうもない。きっとまた貸切の山に戻ってしまうのだろう。
山ガールなんて本当にいるのかな? マスコミで創った虚像ではなか、それとも山ガールの好みは、こんなローカルの山でなく百名山のような有名な山を好むのか。
山中諏訪神社奥宮
明神峠の上に小さな社が鎮座していた。台座の文字を見ると
「山中諏訪神社奥宮」と刻まれている。まてよさっき明神山の山頂にあった社にも同じように「山中諏訪神社奥宮」と書いてあった。
一つの神社に奥宮が二つある事もあるのか?良く分らないが山中諏訪神社とは山中湖の畔にある神社で、そこのHPを見ると奥宮は明神山山頂となっていた。
湯船山に着いた。ここの山頂には三角点が設置されていたが、雑木林に囲まれていて景色は余り良くない。山の名前が湯船なら以前はこのあたりに鉱泉でも湧いていたのだろうか。それとも山容が湯船に似ていたのか? 岩田さんの標識を見てもその事には触れてなかった。
白くらの頭を通り過ぎたあたりから動物の糞のようなものを見かけるようになった。黒豆のような色や形で大きさもその位か。でも果実では無さそうだし熊や猪や鹿などの大型動物の糞ではない。では兎か栗鼠の糞か? 尾根の道の所々に固まって落ちていた。
明神峠あたりから時折青紫色のトリカブトの花が咲いていた。この花は良く見ると確かに兜のような形をしている。それも日本の兜より西洋の騎士が被る縦長の兜に似ている。本来は烏帽子の形や鳥の鶏冠に似ているからトリカブトと名付けたようだが----。
トリカブトは昔は、その根の毒を鏃(やじり)に塗って毒矢として利用したようだが、最近では保険金殺人の毒薬として使われた事もある。全く嫌な世の中になったものだ。
サンショウバラ(山椒薔薇)
トレイルの標識では「サンショウバラの丘」岩田さんの標識では「樹下の二人」とロマンチックに命名してあるサンショウバラの群生地に着く。ここからの眺めは良く、これでサンショウバラの花が咲いていれば、さぞ気分が良くなるだろうと思える場所だ。花は6月頃咲くとあるので、その時季にもう一度来ても良さそうだ。
ただ今は11月。棘のある木が群生しているだけだった。
世附(よずく)峠に2時30分に着く。5時までにあと2時間30分あるが、この峠がコースのどの辺りに位置するのかよく分らないが、標識では最後の山
「不老山 1.3km」となっている。
この峠から林道で小山に下れるのだが、その林道の入口にはロープが張ってあり
「通行止 台風9号の影響により通行できません」となっていた。エツ台風9号? 12号や15号ではないか。チョット驚いた。でも最近の小山町は集中豪雨とか自然災害が多く、昨年富士山一周で歩いたときも橋が崩壊して通行止めになっていた。
道標と神奈川県の貼紙
峠の反対側の神奈川県側にも
「丹沢湖方面登山道通行止 9月の台風により吊橋が流出し、林道も崩壊のため 当分のあいだ通行できません」となっていた。こちらは神奈川県の貼紙だが9月の台風なら12号か15号だ。
貼紙の中に「丹沢湖」の文字にひっかった。まさかこの辺りから丹沢湖に抜けられるとは思ってもいなかった。家に帰り地図を確認すると間違いなく丹沢湖に抜ける道だった。しかも標識には峠から2・2kmでダムの上流の浅瀬となっている。
同じ標識で駿河小山駅は8.4kmと書いてあるのに比べ何という近さだろう。なんか歩いてみたくなってしまった。
次回サンショウバラの丘から丹沢湖に抜けるコースも面白そうだな。
不老山の上りは世附峠から標高差が200m近くあり、結構きつかったが距離が短かったので30分も掛からず着いてしまった。
不老山山頂(静岡側)より
不老山は双耳峰になっていて、トレイルのコースは静岡側の山頂を通っている。ここからの富士山は格好良く見えていた。
標高928mの不老山の山頂は神奈川県側にあり、コース上の山頂より更に200mほど東に行った所にある。若しかしたら、そちらから丹沢湖や丹沢山塊の景色が見えるかなと思い行ってみた。すると途中にトリカブトが集中して生えていたが、花の咲いている株は二輪しかなかった。
何故かこの不老山にはトリカブトが沢山ある。「不老山に猛毒のトリカブト」一見不釣合いだが-----
アッ!そうだ。若しかすると不老とは不老不死の不老で「おいず」となる。すると老いる前に死んでしまえば不老である。ならばこの付近の昔の人は、年老いて一人前に働けなくなると、この山に入り、猛毒のトリカブトで自らの命を絶ったのではないだろうか。姥捨山の駿河版だ。
勝手な解釈を思いつき興奮してしまった。家に帰り不老山の謂れを探したが出てこなかった。代わりこんな説を見つけた。
「富士山の名の由来は山麓に自生しているトリカブト(附子(ぶし))からとする説もある」と、ヘートリカブトが富士山の名前の由来とは始めて聞いた。確か富士山は「不二」とも書いたはずだが、それでは不老山と富士山を合わせれば「不老不死」となる。それなら、このトレイルは
「不老不死トレイル」と名付けてもよい。
不老山山頂(神奈川)
神奈川側の山頂はベンチのある開けた山頂があるだけだったが、ここからも丹沢湖側への下山道があった。
さて、この後の道は下りだけのはずだ。山頂の道標には小山駅まで6.3kmとある。今時刻は3時10分。残りは2時間をきったが何とかなるだろう。しかし気を緩めず頑張って下ろう。
急な下りをズカズカと下っていく。途中金時公園に向う分岐もあったが、この道も通行禁止のはずだ。更に尾根道を30分ほど下ると生土(いきど)分岐に着いた。確かここが最後の分岐で、ここを下れば途中に神縄断層があり途中から林道になっているはずだ。
時刻は3時45分だが今日は曇り空のせいか少し暗くなってきた。岩田さんの標識は盛んに尾根道を誘っているが、ここは一番考えなければ。
ウーン懐中電灯も無いし余り無理をするのは止めよう。と断層に向かう道を下り始めた。ほんの20mも下っただろうか、すぐ林道に合流した。未舗装の林道だが、これで道の心配は無くなった。安心したのか歩くスピードが落ちてきた。駄目駄目ここで暗くなったら足元が見えず困った事になる。気分を高めようとしたが一旦緩んだ気持ちは中々盛り上がらなかった。
無名の滝 神縄断層
林道の横に小さな滝があった。まだ握飯が一つ残っているので滝を見ながら食べようかとも思ったが、すでに4時を過ぎている。腹は減っているが我慢しよう。
神縄断層に出た。この断層は案内板にこんな風に紹介してあった。
「神縄断層(伊豆半島衝突の現場) 約1万5千万年前 伊豆半島は島でした。それから少しづつ北上して約100万年~50万年前 本州と衝突しました。垂直に走る1本の断層線を挟んで左が本州側(凝灰岩)で右が伊豆半島(礫層)です」とあった。
断層を見ると確かに右は固い岩で、左は砂利含みの泥の層だった。
ここが伊豆半島の衝突の現場なら海側の衝突現場はどの辺りになるのだろうか、丹沢が本州側とすると南は小田原あたり。西は富士山や愛鷹山も本州なら沼津辺りから箱根外輪山に沿って、この神縄断層まで続いているのだろうか。興味を感じたので調べてみたが分からなかった。
国道246のバイパス
中々人家が出てこない。林道は相変わらず未舗装のままだ。やっと見えたと思ったら作業小屋でガッカリしたりしたが、ようやく電線の張ってある所まで来た。オヤ前方上に高架の道路が見える。新東名か?いずれにしても集落は近いだろう。
高架の下に近づくと民家が突然と言うように見え出した。普通なら沢伝いにポツリポツリと家がが出てくるのに、ここは高架より山側には家が無く、まるで私をからかっているようだった。
高架下に来ると上から車の騒音が聞こえてくる。前方遠くには交通量の多い東名らしき道が見えるので、この高架は国道246号のバイパスだと分かった。
246バイパス橋脚の道標
バイパスの橋桁には富士箱根トレイルの案内板が何枚も立っている。どうやら生土分岐の尾根道を来ると、ここに出てくるようだ。今時間は4時25分。尾根道を歩いてきたら、もっと遅くなっていただろう。神縄断層も見たし林道を来て正解だった。そう思おう。
旧246からの富士山
すぐに旧国道246に出た。駅に行くには右なのか左なのか分らない。誰かに聞きたくても道を歩いている人はいない。さて困った。小山駅は確か国道と並行に流れている川を渡った所にあるから橋を渡らなければならない。仕方ない、と明神峠から直接小山駅まで歩くため作った資料を取り出して確認をする。中途半端な資料で渡る橋より西側の地図しか印刷してなかったが、だがようは西に行けば橋はあり、それを渡ればよいのだから西に向かって歩けばよい。
川の横に出て上流(西)を見ると橋が見えた。正解だ。橋を渡ると踏切があった。小山駅はその踏切を渡り左折して東に戻った所にあった。
ほぼ想定通り4時45分駿河小山駅に到着。アッ下り(沼津方面)に電車が出発する。ヤイヤイ御殿場線は電車の本数が少ないでがっかりだ。次の電車を確認すると案の定1時間後の5時40分だった。
イエイエこのお陰で氷結も買えたし、おまけのワンカップまで買ってしまった。残った握飯も食べて、駅前にある小山町の観光案内所で富士箱根トレイルや次回歩く金時山のパンフレットも手に入れることが出来た。乗り遅れて儲かった気分だ。
そうそう岩田さんの標識に書いてあった時間と比べてみます。
標識には81才の岩田さんは、小山駅まで5時間20分で歩き、67才の私は
16:45-11:00=5時間45分 ですが私は明神山に登っているので、その分30分を引くと
5時間15分になります。
よって5時間20分≒5時間15分となり、私の歩行速度は81才の人や中高年の女性の速度となんら変わらない事になります。
こまかいコースタイム等は次回紹介します。