はぐれ遍路のひとりごと

観ながら歩く年寄りのグダグダ紀行

四国遍路31日目

2018-04-12 10:00:00 | 四国遍路
          
                         75番 善通寺

                     善通寺(31日目) (2003/4/12)

宿(5:50)→曼荼羅寺(72)→出釈迦寺(73)→甲山寺(74)→善通寺(75)→
                 金蔵寺(76)→道隆寺(77)→郷照寺(78)→宿(15:55)
  30.7km

 正面の山の中腹には寺のような建物が見える。
あれはきっと73番出釈迦寺の奥の院で、弘法大師が身を投げたと伝わる山だろう。

今日の予定は善通寺を打ったあと金比羅さんにお参りするかどうかでまだ悩んでいる。
行きたい気持ちは非常に強いのだが、観光客の中を一人遍路装束で歩くのに気後れがしてならない。

道後温泉でもそうだったが、ジロジロ眺められたり写真を撮られたりして落ち着かない。
かといってそのまま札所を直行すると今日中に78番まで終わってしまい、残りが10ヶ寺となってしまう。
それも寂しい。仕方ない善通寺まで悩みながら歩く事にしよう。

 73番出釈迦寺に着く。途中見えた山腹の建物はやはり奥の院の捨身ヶ嶽禅定だった。
麓の納経所にザックを置かせてもらい奥の院に向かい歩き出した。
境内には何人かのお遍路さんが居たが、誰も奥の院には登らないらしい。ザックも無くのんびりと簡易舗装の道を行く。

奥の院でお参りをしていると中から僧が出てきて 「どうぞ中でお参りして下さい」 と招き入れてくれた。
お茶の接待を受けながら雑談をしていると 「今日は他に誰も居ないから裏の岩を登っても良いですよ」 と言ってくれた。

外に出て寺の裏に廻ると、突然と言った感じで岩場が現れ、踏跡のついた道には“通行禁止”の立札が。
本来なら登っては駄目だが、私が一人だった事と、通し打ちをしていて体力があると判断して登る事を許してくれたのだろう。

しかし迷った。これが通行禁止の立札がなければ登ってしまうのだが、通行禁止を特別に僧侶が許可してくれたとなると、
若し仮に私が滑落して怪我でもしたら僧侶の責任になってしまう。それは困る。
それに疲れた足はいざと言う時に踏ん張りが利かないかもしれない。自分に似合わず登ることを諦めた。

 奥の院からの眺めは中々良かった。讃岐らしいく溜池もやお結びのような格好の山も眺められる。
あんなに低い山では保水量が少なく、少し雨が降らないと、すぐ水不足になってしまうのだろうと納得もした。

そうだ閃いた。石鎚山に降る雨は吉野川に流れ込む。
その吉野川は時々氾濫するので、古い堰を壊して河口堰を作ろうとしているが反対運動が起きている。
それならトンネルを掘り、吉野川の水を讃岐側に引き込めばどうだろうか。
こんな発想が浮かぶようではまだまだ心身ともに大丈夫だろう。??

 善通寺はさすがに広大で、何処をどう行けば良いのか迷ってしまった。
また日曜日のせいなのか参詣客が多く、まるで縁日のような賑わいだ。

おかしな遍路も居た。長靴を履いて上だけ白衣で菅笠を被って托鉢をしている。付近にはザックも杖も無い。
ウーンこれは偽遍路だと感じた。
次はザックも杖も持った遍路が托鉢をしている。この遍路は本物そうだが何故托鉢しているのか理解が出来ない。
貰ったお金はどうするのだろうか? お賽銭にするのか自分が使ってしまうのか? それとも何処かへ寄付するのか。
それにしても托鉢に応じてくれる参詣客がいるのだろうか。
遍路の前を通るときは自分まで恥ずかしく感じて足早に通り過ぎた。

 金比羅参詣に結論がでた。中止だ。
今日は日曜日、金比羅さんは善通寺より観光客が多そうだし、恥ずかしい気分を味合うのは嫌だ。

 今晩の宿の第一候補の国民宿舎へ予約の電話を入れると、簡単に予約が取れた。ラッキー!
今日は大きなお風呂に入れるゾ。

いつでも入れる大きい風呂は非常に魅力だが、ひとつ困ることがある。それは下着の洗濯だ。
風呂場では洗濯しないのが常識とは知ってはいるが、遍路の旅では中々これが困る。
パンツ、シャツ、靴下の三点セットは、何が何でも毎日洗濯をしなければならないので、風呂場で洗うのが一番簡単で楽だ。
洗面台でも洗えるが洗面台が小さく床を濡らしてしまう。

そこで風呂場で洗う事になるのだが、風呂場に入って誰も居なければ先ず洗濯をする。
誰か居れば様子を見ていて一人になった時に慌ててする。
中々一人になれない時は、仕方なく一番隅の洗い場で小さくなって洗濯をしている。
他人さえいなければ大風呂は大歓迎だ。

 77番道隆寺でヤクルトとお菓子の小袋の接待を受けるが、お寺さんからのお接待は気楽で嬉しい。
 「有難うございます」 と一言って納経所を出ればすぐ食べられる。
ヤクルトなど飲んだこととはないが濃厚な液体がすぐ体力に変身する感じだった。有難うございました。

 今日は天気が良く、太陽光線がギラギラ降りかかってくるような熱い一日だった。
ヤクルトを飲んだ後は、宿での楽しみを倍化しようと水分を取らず我慢して歩く。
楽しみとは、言わずと知れた生ビールを飲むことだ。

私は焼酎と日本酒が好きでビールは乾杯の時一口飲む程度だ。
理由はビールを飲むと何故か喉がノツノツしてきてビールがスムーズに喉を通ってくれない。
それが不思議な事に樽の生ビールだとゴクゴクと幾らでも飲めてしまうのだから不思議なものだ。
友人は “お前は我儘だ” と言うが飲めないものは仕方ない。

 ホテルに着く頃は喉が渇いてゼーゼーする感じでフロントの前に立った。
 「今日予約しました〇〇ですが」 と言おうとするのだがゼーゼー言うだけで声が出ない。
咳払いを何度もするのだが出てこない。
仕方なくゼスチャーで喉を指差した後、飲むまねして水を貰い、やっと声が出た。

酒飲みは意地が汚いと言うが本当だ。
それにしてもこんな度が外れたことをすると熱中症に罹ってしまうと反省。

 今日はもう一つ反省することがあった。
納経のときに “お姿” と言う、お寺のご本尊を印刷した小さなお札を毎回貰っている。
無くさないようにビニール袋に入れていたが、徐々に数が多くなってたので “御本尊御影保存帳” なる物を購入した。
そして宿でその日の受取ったお姿をその保存帳に入れているのだが・・・・・
無い! 76番金蔵寺のお姿が無い! こんな事は初めてだ。
今日は9カ寺と札所の数は多かったが、受取るとすぐビニール袋に入れていたのに無い。
残りが後10カ寺になり気分が弛んできたのか、それとも疲れが溜まり虚ろになっているのか、
いずれにしても気をつけよう。
(お姿は帰郷後返信用封筒を入れて金蔵寺に依頼して送ってもらいました)

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