みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

稲の最適土壌は中性でも、ましてアルカリ性でもない

2017-01-07 12:00:00 | 賢治渉猟
 先に〝水稲用の土壌はアルカリ性であっては駄目〟において、かつて満蒙開拓青少年義勇軍の一人であった滝沢市のKT氏から、
    稲は酸性に耐性がある。……①
という意味のことを教わった(平成28年9月7日)ということを投稿したのだが、この度農林水産省のHP
   http://www.maff.go.jp/index.html
を見たところ、確かにそうであった。
 具体的には、同HPにおいて、「キーワードで探す」の窓で
   pH 作物
と入力して検索すると、
   『3 土壌のpHと作物の生育 3-1 作物別最適pH領域一覧』
というタイトルの一覧表が現れる。
 そこでその中の穀類や野菜について主なものを抽出してみると以下のような表になった。

そして、稲に適する土壌のpHについてはやはり、
     〝pH5.5~6.5〟の土壌にすることが水稲にとっては最適なpHだった。……②
しかも、アルカリ性(つまりpH7以上)の欄はないから、
    アルカリ性の土壌が最適である作物など一つもない。
と判断できる。

 したがって、改めて
    稲の最適土壌は中性でも、ましてアルカリ性でもない。
    稲の最適土壌は、微~弱酸性(pH5.5~6.5)で、しかも広い領域で生育するのであった。

ということを再認識した。つまり、石灰やタンカルをむやみやたらに撒けばいいというものではなかったのだ。
    まさに過ぎたるは及ばざるが如し。
である。

 さて、そうすると心配になってくることは次のことであり、はたして当時の賢治は耕土のpHを計っていたのであろうか。そして、〝②〟ということを知っていたのだろうかということである。
 どうも当時の賢治は、 
 水稲の場合も望ましい「耕土」は中性であり、ただし水稲は酸性の耐性もある、と認識していた。
判断できそうだが、実は精確には
 水稲の場合も望ましい「耕土」は中性(pH7)ではなく、水稲の最適なpHの値は〝pH5.5~6.5〟の範囲の値だった。また、水稲は酸性の耐性があるというよりは、微~弱酸性(pH5.5~6.5)であり、しかも広い領域で水稲は生育する。
であったのだ。
 だからまさしく、花巻農学校時代の同僚阿部繁が、
 科学とか技術とかいうものは、日進月歩で変わってきますし、宮沢さんも神様でもない人間ですから、時代と技術を超えることは出来ません。宮沢賢治の農業というのは、その肥料の設計でも、まちがいもあったし失敗もありました。人間のやることですから、完全でないのがほうんとうなのです。
             <『宮沢賢治の肖像』(森荘已池著、津軽書房)82p~より>
と、後々当時のことを振り返って発言していたのはこのことを示唆しているのかもしれない。

 また、この件に関しては〝あれっ、知らないのは私たちだけ?〟も併せてご覧頂きたい。「稲作で安易に石灰を施用すると、逆効果?」ということを賢治は気付いていたはずだからだ。

********************************************************《御案内》**********************************************************
 この投稿〝稲の最適土壌は中性でも、ましてアルカリ性でもない〟に関連する論文、
    『宮澤賢治の「稲作と石灰」について』
を、令和2年の第73回岩手芸術祭「県民文芸作品集第51集」の「文芸評論部門」に応募しましたところ、「奨励賞」に入賞いたしました
 そこで、この論文は令和2年12月12日(土)刊行の『県民文芸作品集』に掲載されておりますので、どうぞ御覧下さい。
 その後、拙ブログにも同論文を掲載いたしました。ここを、
     論文『宮澤賢治の「稲作と石灰」について』
をクリックすれば御覧いただけます。

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4 コメント

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pHは畦の植物で (佐藤)
2017-01-10 06:54:53
詩「それでは計算いたしませう」では、
「畦やそこらに(略)そんならスカンコは生えますか」
とあります。
スカンコはイタドリのことだと思いますが、酸性土壌にはえる草です。
詩を現実に安易に還元することは避けなければなりません。
しかし、この詩がある程度、賢治の肥料相談のようすを反映していると仮定するなら、畦の草の種類も参考にして土壌のpHを推測していたのではないかと思います。
返信する
ありがとうございます (佐藤様)
2017-01-10 09:17:05
佐藤 様
 いつもいろいろとご教示ありがとうございます。
 仰有るとおりかもしれませんね。

 当地では、スカンコとかスカンポとはスイバのことで、子どもの頃囓ってみると、その名の通り、酸っぱかったことを思い出しました。
 イタドリも確かに酸っぱそうですね。これらは皆タデ科ですから。
 ちなみに、これらはどれくらいのpHの土壌に生えているのでしょうね。
 それから、賢治自身は「稲の最適土壌は、微~弱酸性(pH5.5~6.5)」ということは承知していたのでしょうか。もしお分かりでしたらご教示お願いいたします。
                                      鈴木 守
返信する
pH関連 (佐藤)
2017-01-10 18:41:19
ご返信ありがとうございます。
緑化マニュアルなどを見ますと、イタドリはpH4で生育可能なようです。

賢治の恩師は土壌学の権威、関豊太郎で、卒業後も交流があります。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001747456

そこで当時の最先端土壌学がどこまで進んでいたのかを調べると賢治の知識とほぼ同等ということになりそうです。国会図書館のサイトで検索してみたいと思います。
返信する
ご教示ありがとうございます (佐藤様(鈴木))
2017-01-11 10:10:51
佐藤 様
 早速ご教示ありがとうございます。
 そうですか、イタドリはpH4で生育可能なのですね。
 また、論文につきましてはじっくりと拝見したいと思っております。
 それでは、これからもどうぞご指導よろしくお願いいたします。
                                     鈴木 守
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