みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

「藥も、すぎれば毒になる」

2021-01-27 20:00:00 | 甚次郎と賢治
《『日本の米』(永井威三郎著、大日本雄弁会講談社、昭和18年)》  さて、『日本の米』は「子ども向け」のようなので、予想していたように、私のような「非専門家」にも解りやい。ほっこりしながら読み続けると、さらにこう続いていた。  そのほかにはまだ、過燐酸石灰といふ、やはり粉の肥料があります。これは、燐酸の肥料です。  それから、加里をふくんだ肥料には、硫酸加里をつかひます。この肥料は、ほとんど全部ド . . . 本文を読む
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「稲の肥料(こやし)」

2021-01-26 20:00:00 | 甚次郎と賢治
《『日本の米』(永井威三郎著、大日本雄弁会講談社、昭和18年)》  ここのところ〝賢治の「稲作と石灰」〟シリーズを投稿しているのだが、如何に自分が当時の「稲作と肥料」のことを知らないかということを思い知らされる。なおかつ、肥料のことは私には難しい。  そこで何かいい図書がないだろうかと思って探し廻っていたならば、『日本の米』(永井威三郎著、大日本雄弁会講談社、昭和18年)が見つかった。これは、「小 . . . 本文を読む
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『土と戦ふ』 

2021-01-25 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『現代文学の底流』(南雲道雄著、オリジン出版)〉  南雲氏は『現代文学の底流』の中で、甚次郞に引き続いて、先に前触れしておいた菅野正男を次のように取り上げていた。  菅野正男『土と戦ふ』と、いきなり読まされると戸惑う人は少なくないだろう。この記録は〈満蒙開拓青少年義勇軍〉の義勇隊訓練生として昭和一三年(一九三八)四月、現在の中華人民共和国 . . . 本文を読む
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松田甚次郎の「滿州移民」論

2021-01-24 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『現代文学の底流』(南雲道雄著、オリジン出版)〉  そこで、甚次郎の正・續『土に叫ぶ』を見直してみると、その「趣旨書」の中の「更に次三男の靑年をば滿鮮の曠野に耕作出來る拓殖訓練をも授け」るための方法論を述べている可能性がある項は『続 土に叫ぶ』の中には見つからず、『土に叫ぶ』の中に、     「一〇 日本協働奉仕團の結成」で「祖国愛」 (287p~) と     「一四 農村最近の動向と時局」で . . . 本文を読む
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「拓殖訓練をも授け」

2021-01-23 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『現代文学の底流』(南雲道雄著、オリジン出版)〉  南雲道雄氏が『現代文学の底流』の中で松田甚次郎に関して論じていた。それは、  松田甚次郎『土に叫ぶ』は昭和一三年(一九三八)のはじめ、冬から春にかけての約二カ月のあいだに書かれ、その年の五月末に第一刷が刊行された。…投稿者略…農相有馬頼寧・貴族院議員田沢義鋪・農学博士小野武夫らの推薦を受けてベストセラーとなって版を重ねた。            . . . 本文を読む
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『近代日本の土着思想 農本主義研究』より

2021-01-22 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『農本主義と天皇制』(綱澤 満昭著、イザラ書房)〉  前回私は、「このことは次回触れる予定だが」と前触れしたが、それは綱澤 満昭氏の『近代日本の土着思想 農本主義研究』の中の一言、「農本主義思想は「百花繚乱の状」を呈」のことであり、同氏は、  昭和五年から七年にかけての農業恐慌と農業危機の激化は、農本主義思想に「百花繚乱の状」を呈せしめたのである。そのなかでももっともオーソドックスな人物として桜 . . . 本文を読む
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「農本主義」私の理解

2021-01-21 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『農本主義と天皇制』(綱澤 満昭著、イザラ書房)〉  ところで、そもそも「農本主義」の定義とは一体どんなものか。「農本主義」を扱った著作は少なからずあるが、内包的定義をしているものは見つからず、多くは外延的なそれであったからである。  そこで、困った時の神頼み、『広辞苑』を見てみると、  【農本主義】農業をもって立国の基本とし、従って農村をもって社会組織の基礎としようとする立場。と定義されていた . . . 本文を読む
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加藤完治の責任

2021-01-20 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『農本主義と天皇制』(綱澤 満昭著、イザラ書房)〉  そもそも加藤完治のおいたちなどは如何なる人物だったのだろうか。そこで、『満蒙開拓青少年義勇軍』(上笙一郎著、中公新書)や『「賢治精神」の実践』(安藤玉治著、農文協)などで調べてみると、  加藤完治は明治11年1月22日に東京本所の旧士族の家に生まれ、第四高等学校(旧制)時代に女性宣教師に導かれてクリスチャンになり、その頃は天皇から乞食に至るま . . . 本文を読む
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夢みて渡満した少年たちの現実

2021-01-19 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『農本主義と天皇制』(綱澤 満昭著、イザラ書房)〉  さて、内原訓練所で加藤の薫陶?を受け、加藤の訓辞で送り出された15歳~19歳の青少年は「第二の屯田兵」とか「昭和の白虎隊」と褒めそやされ、「片手に鍬、片手に銃」を合い言葉に満蒙で大地主になることを夢みて渡満したのだがその夢はあえなく破れ、彼の地で味わったのは言葉では言い表せないほどの辛酸であったようだ。  それは、次の2葉の写真 【1 大地で . . . 本文を読む
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内原訓練所では

2021-01-18 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『農本主義と天皇制』(綱澤 満昭著、イザラ書房)〉  さて前々回、あの「内原訓練所」が設置された経緯はわかったのだが、その訓練所に関して今回は投稿したい。  その訓練所とは、昭和3年に松田甚次郎が入学して1年間を過ごしたという、 【1 日本国民高等学校】            の隣にあった次のような建物である。 【2 満蒙開拓青少年義勇軍内原訓練所】             この訓練所へ、 . . . 本文を読む
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上 笙一郎によれば

2021-01-17 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『農本主義と天皇制』(綱澤 満昭著、イザラ書房)〉  一方で、上笙一郎によれば、  この建白書の内容を少し紹介してみると、まず冒頭で、「満州国をして真に日本民族を指導者とする王道国家たらしむ」るには、「わが農民を移し、以て堅実なる農村を建設し、国礎の中核たらしむる」ことが不可欠であり、そのため「最も適切有効なる実行方法は満蒙開拓青少年義勇軍の編成」のほかにないといっている。            . . . 本文を読む
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「満蒙開拓青少年義勇軍編成に関する建白書」

2021-01-16 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『農本主義と天皇制』(綱澤 満昭著、イザラ書房)〉  さて、日本国民高等学校には「学校教育のもつ知育偏重、つめこみ主義、受動的学習」を是正しようとした真っ当な教育方針、長所もあったのだが、そこでの加藤完治の農民教育観は現実に即したものではなかったという致命的な弱点があったようだ。そこで加藤はどうしたかというと、満蒙移民は農民教育の延長であるという飛躍した発想を基にして、満蒙開拓青少年義勇軍を創設 . . . 本文を読む
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『日本国民高等学校』の帰結

2021-01-15 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『農本主義と天皇制』(綱澤 満昭著、イザラ書房)〉  そこで、『農本主義と天皇制』をもう少し読み続けてみよう。綱澤氏は、こんなことも主張していた。  加藤は一切の虚無的、厭世的、逃避的思想を否定し、堂々と勇敢に真正面から人生を肯定していく積極的姿勢を示し、農民教育の一般教育への普遍化をねらった。それがたまたま大正期に展開した新教育運動と奇妙なかたちで結びつくことになったのである。学校教育のもつ知 . . . 本文を読む
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「日本国民高等学校設立趣意書」

2021-01-14 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『農本主義と天皇制』(綱澤 満昭著、イザラ書房)〉  さて、先の投稿〝加藤完治に学ぶ(承前)〟の中で私は、  「開塾の趣意」で松田は「更に次三男の青年を満鮮の曠野に耕作できる拓殖訓練を授け」と加藤の言葉そのままのようなことも述べたが、彼の村塾はついに一貫してその道は選ばなかった。             〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』(安藤玉治著、農文協)96p〉 を引いたが、 . . . 本文を読む
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『續 土に叫ぶ』より

2021-01-13 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『續 土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)〉  さて、先に私は〝加藤完治に学ぶ(承前)〟において、  『土に叫ぶ』の中にたとえば小野武夫の名は登場していたが、加藤完治の名は殆ど登場していなかったのではなかろうか、と訝ったからだ。そこで実際に確認してみると、加藤の名が登場していたのは、  昭和三年、一ヶ年は、精神鍛鍊と農民の信念を確立するために、私は加藤完治先生が校長をしている日本國民高等學校に在 . . . 本文を読む
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