みちのくの山野草

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谷川徹三の「今日の心がまえ」(昭和19年9月)(最高の詩)

2022-01-12 10:00:00 | 一から出直す
《三輪の白い片栗(種山高原、令和3年4月27日撮影)》
 白い片栗はまるで、賢治、露、そして岩田純蔵先生の三人に見えた。
 そして、「曲学阿世の徒にだけはなるな」と檄を飛ばされた気がした。

 では、今回は谷川徹三の講演「今日の心がまえ」(昭和19年9月20日)からである。
 もちろん、昭和19年9月20日に東京女子大学で行われたあの講演であり、それは次のようにして始まったという。
 演題は「今日の心がまえ」となっておりますけれど、実は一人の人について、その一人の人のひとについても、特にその一つの詩について私はお話ししたいのであります。その一人の人とは宮沢賢治、そしてその一つの詩というのは「雨ニモマケズ」という、あの詩であります。…投稿者略…その最もよく知られた詩について、ここで改めて私がお話ししたいというのは、この人がもっともっと知られてよい人であり、そしてその詩が最も知られてよい詩であると思うからであります。
               〈『宮沢賢治の世界』(谷川徹三著、法政大学出版局、昭和45年)3p~〉
 しかし、そもそもどうしてこんなタイトル「今日のこころがまえ」なのだろか。すると直ぐに思い付くのは、昭和19年といえば戦局が悪化し、国民生活が窮乏していった年だということだ。だから、タイトルが「今日のこころがまえ」であったことは、ある意味当然だということに気付く。つまり、あの「欲しがりません勝つまでは」の精神を大政翼賛会は国民に染み込ませようとしていたから、これに呼応したタイトル「今日の心がまえ」だったのではなかろうかと、そして谷川は大政翼賛会の意を体して、そのために賢治を、特にその作品「雨ニモマケズ」を利用しようとしたのではなかろか、とつい勘ぐってしまいたくなる。

 そして、谷川は引き続いて「雨ニモマケズ」を聴衆の前で朗読し、朗読後、あの有名な一言、
 この詩(「雨ニモマケズ」のこと:投稿者註)を私は、明治以来の日本人の作った凡ゆる詩の中で、最高の詩であると思っています。
             〈同6p〉
とか、
 その精神の高さに於いて、これに比べ得る詩を私は知らないのであります。
             〈同〉
とも語ったという。谷川は「雨ニモマケズ」を褒めちぎっていたことになる。
 先に私は、「少なくともこの時点(昭和10年4月20日)で既に谷川徹三は賢治のことを極めて高く評価していたことを知った」のではあるが、今度はここでは、「最高の詩である」などというように最高級の褒め方をしたことが逆に、不思議だ。谷川はこの講演で、「賢治の生前竟にその人を知ることができず」(同31p)とも述べているから、生前の賢治を全く知らなかったはずなのでなおさらにだ。

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【キャッチコピー】 


【目次】

【序章 門外漢で非専門家ですが】


【終章】



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