みちのくの山野草

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「ヒドリ」と「ヒデリ」私見

2019-01-05 14:00:00 | 涙ヲ流サナカッタヒデリノトキ
《「大正15年稲作」旱害惨状報道(昭和2年1月9日付『岩手日報』)》

 先頃、盛岡在住の賢治研究家から「ヒドリ」と「ヒデリ」についての意見を求められた。
 意見などという程のものは持ち合わせてはいないが、そのお方には後ほど次のような私見をお伝えした。
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 私見等は以下のとおりです。
⑴ 賢治は『雨ニモマケズ手帳』には、たしかに、
    ヒドリ
と書いている。
⑵ 〔雨ニモマケズ〕は、「ヒドリ」以外は全ていわゆる標準語で書かれているから、「ヒドリ」もそうであると判断せざるを得ない。
⑶ 〔雨ニモマケズ〕は基本的には「対偶法」(「対句法」)という修辞法が用いられている。
⑷ 主語は「ワタシ」、つまり賢治である。

 したがいまして、 
   ヒドリノトキハナミダヲナガシ
   サムサノナツハオロオロアルキ

   賢治はヒドリの時は涙を流し
   賢治は寒さの夏はおろおろ歩き
となると思います。
 そこで、『広辞苑 第二版』(新村出編、岩波書店)の「ひどり」の項を見てみますと、唯一項目のみがあり、
   【日取】或ることを行う日をとりきめること。また、その期日。
となっておりますので、上掲の「ヒドリ」は「或ることを行う日をとりきめること」となり、
   賢治は「或ることを行う日をとりきめる」時は涙を流し
となります。そうしますと、この文が補足説明なしで日本中の人びとにはっきりと意味が通じるか否かが大問題となります。
 もちろん、石川栄助先生の「ヒドリは永訣のこと」とか「ヒドリとは「悲しみの日」のこと」のように、「永訣」や「悲しみの日」という補足説明がつけば日本中の人びとにも通じるかもしれませんが、補足説明なしではそのような意味だということは日本中の人びとに通じないと、残念ながら判断せざるを得ません。
 そこで、賢治の「ヒドリノトキハナミダヲナガシ」はどこかに誤記がある蓋然性が高いということになります。となれば、それは「ヒドリ」であるとしかほぼ考えられません。なんとなれば、「……トキハナミダヲナガシ」と「……ナツハオロオロアルキ」は対句法でペアになっていて、なんら不自然さがありませんから、こちらが誤記であるとは考えられないからです。
 では、「賢治はヒドリの時は涙を流し」の「ヒドリ」は何の誤記かというと、対句法からいって「ヒデリ」の誤記である蓋然性が極めて高い、ということに気付くことは至極自然だと思います(要は、賢治も人の子、間違うこともたまにはある。そして実際に、賢治は結構誤記がある)。
 畢竟、
 「ヒデリの誤記説」と「ヒドリはヒドリだ説」のどちらが真実である蓋然性が高いのかというと、前者の方が後者よりはるかに高い。
というのが私見であり、結論です。
 なお、W氏(ここは、実名をイニシャルに変更して投稿する)は、
 「ヒドリ」は南部藩では公用語として使われていて、「ヒドリ」は「日用取」と書かれていた。……①
という主旨のことを『宮澤賢治のヒドリ』の中で述べておりますが、それはW氏の強弁です。
 なぜならば、神聖であるべき資料(「新田開発の奨励」)を同氏は改竄して①の典拠にしているという誹りを受けかねないからです(同封いたしました拙著『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』の「ヒデリノトキハナミダヲナガシ」(24p~)をご覧ください)。
 したがいまして、このことを知ってからというものは、W氏の如何なる論にも私は与することはできなくなりました。
 また、この①につきましては入沢氏からも、「このなにやら詐術めく引用の仕方」とW氏は厳しく批判されております(『賢治研究 121号』(宮沢賢治研究会、平成25年8月)4p)。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月231日付『岩手日報』一面〉
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 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
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      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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