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《三輪の白い片栗(種山高原、令和3年4月27日撮影)》
白い片栗はまるで、賢治、露、そして岩田純蔵先生の三人に見えた。
そして、「曲学阿世の徒にだけはなるな」と檄を飛ばされた気がした。
白い片栗はまるで、賢治、露、そして岩田純蔵先生の三人に見えた。
そして、「曲学阿世の徒にだけはなるな」と檄を飛ばされた気がした。
さて、佐々木多喜雄氏の論考『「宮沢賢治小私考-賢治「農聖伝説」考-』(『北農』(北農会)連載)によって、
中央文壇関係者の見た賢治の農業実態は、伝聞や賢治作品等をそのまま事実としたが故に生じた、本当の姿からは遠くかけ離れたものであり、しかも、そもそも農業関係者が賢治の農業実態に触れたものが殆どないということから、それは自ずから賢治の農業実態はそれ程のものはなかったということを意味するので、
賢治の農業実態はそれ程のものではなかった。
と結論せざるを得ない
ということを知った。賢治の農業実態はそれ程のものではなかった。
と結論せざるを得ない
するとその時、なぜか、「もう止めませんか、嘘かもしれない賢治を子どもたちに教えることは」という、つぶやきが聞こえた気がした。そして次に聞こえてきたのが、少年たちが口を揃えて囃し立てている、
「はっぱかげだらざこまがせ」
という声だった。もちろん、「風の又三郎」の〝九月七日〟の中の、「 発破かけだら、 雑魚撒かせ」に当たる。
すると私の中で走馬灯が急に廻り始め、まずまなうらに浮かんできたのが、小学生の時に観た白黒映画『風の又三郎』のそのシーンであった。そこで、あの頃は私も純真だったなと振り返っていると、
どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
というバックミュージックが耳の奥で流れた。青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
そして、その映画を観て程なくして、近所の悪ガキどもと集まって近くの川へ出掛けて行って、持ち寄った山椒の葉っぱを潰して笊に入れてそれを川に流したことがあったなということも思い出した。それはもちろん、「風の又三郎」の〝九月八日〟の「魚の毒もみ使う山椒の粉」を真似してであった。
次が中学時代の友人ことであり、私たちの前で身振り手振りよろしく朗々と「原体剣舞連」を歌い上げた友人の姿がまざまざと眼裏に蘇る。彼は、声優で歌手でもあり、第19回イーハトーブ賞奨励賞受賞者でもある桑島法子の父、桑島正彦である。現在活躍中の作品朗読者の同作品の朗読を聴くことも時にあるが、正彦のそれに誰もかなわないと私は思っている。おそらくその同級生の強い影響もあったからであろう、私も早い時点から賢治が大好きだった。
そして高校時代には、賢治のことも賢治の作品も共によくわかってもいないのに賢治を尊敬していた。それゆえ当時の私は、尊敬する人物は誰ですかと問われると、「破滅的で微分的な啄木と違って、積分的で求道的な生き方をして、貧しい農民たちのために己を犠牲にして献身した賢治です」などと粋がって答えていたものだ。
ところがである、大学時代のことだが、恩師岩田純蔵教授が私たちを前にして、「賢治はあまりにも聖人・君子化され過ぎてしまって、実は私はいろいろなことを知っているのだがそのようなことはおいそれとは喋れなくなってしまった」という意味のことを嘆いたことがある。そこで私は、その頃尊敬していた人物はまさに賢治だったからということだけでなく、実は岩田教授は賢治の甥(賢治の妹シゲの長男)だったからなおのこと、巷間いわれている賢治と本当の賢治とでは違うところもあるのかなと、恩師の嘆きがその後ずっと気になっていた。とはいえ、仕事に従事している間はそのようなことを調べるための時間的余裕が私にはなかった。
それが十数年前に無事定年となり、私はやっとそのための時間を持てるようになって賢治のことを調べ続けることができた。すると、常識的に考えればおかしいと思われるところが、特に「羅須地人協会時代」を中心にして幾つか見つかった。そこでそれらの検証等をしてみた結果は、やはり皆ほぼおかしかった(これらのことなどが、恩師が嘆いていたことの具体例だったのであろうか)。つまり、少なからぬ「嘘かもしれない賢治」が巷間流布していることを明らかにできた(詳しくは、拙著『本統の賢治と本当の露』等をご覧いただきたい)。
一方、私は未だ以て相も変わらず『春と修羅』がよくわかっていない。ただ、勇壮というよりは逆におとなしいとさえも言えるような「雛子剣舞」(「子供念仏剣舞」とか「稚児剣舞」とも呼ばれる)を元にして、よくぞあそこまで勇猛果敢で、圧倒的迫力のある心象スケッチ「原体剣舞連」に創り上げたものよと、賢治のそのずば抜けた創造力に感心する。あるいは、私から見れば「第四次」の特異な感覚がなければ書けないだろうと思われる童話「やまなし」や「おきなぐさ」、そしてあの「星の王子さま」に勝るとも劣らないと私は信じている「なめとこ山の熊」はとりわけ、何度読んでも感動が薄れない。もちろんそこにも、賢治の類い稀なる天賦の才を見る。
しかし、ここまで〝一から出直す〟シリーズに取り組んできた結果、とりわけ佐々木多喜雄氏の、
……このようなことが、少なくとも国内では他に追随を許さぬ一流の心象文学を生む大きな要因になったと考えられる。
然しながら、以上の自活生活の内容は、人の模範とされ、聖人と称されるような内容ではなかったと言えよう。
〈『北農 第75巻第3号』(北農会2008.7)58p〉然しながら、以上の自活生活の内容は、人の模範とされ、聖人と称されるような内容ではなかったと言えよう。
という結論を知り、かつ妥当性に納得できたので、
もう止めませんか、嘘かもしれない賢治を子どもたちに教えることは。
という想いが、私の中で拡大しつつある、ということのようだ。
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【新刊案内】『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))
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当地(お住まいの地)の書店に申し込んで頂ければ、全国のどの書店でも取り寄せてくれますので、550円で購入できます。
アマゾン等でも取り扱われております。
【旧刊案内】『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』(「露草協会」、ツーワンライフ出版、価格(本体価格1,000円+税))
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なお、目次は下掲の通りです。
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岩手県内の書店やアマゾン等でも取り扱われております。
あるいは、葉書か電話にて、入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金として当該金額分の切手を送って下さい(送料は無料)。
〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守 ☎ 0198-24-9813
【旧刊案内】『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版、定価(本体価格1,500円+税)
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