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おわりに

2018-12-23 10:00:00 | 賢治渉猟
《『宮澤賢治』(國分一太郎著、福村書店)》

 さて、最初の方で私は、『宮澤賢治』(國分一太郎著)について、
 もう戦中のしがらみ、つまり「戦意高揚に利用された賢治」に囚われない賢治を自由に論ずることができる時代になったからこそ書かれた本であったということになりそうだ。
と見通したのだが、どうやらほぼそのとおりであった。それは特に、前回の〝六 宮澤賢治とわたくしたち〟において確信できた。そして、以前國分が述べていた
 けれども、わたくしは、わたくしがこの本でやってみるような宮澤賢治の考えかたが、そろそろ、みなさんのところにとどけられてもよいのではないかという気がします。
という「想い」がたしかに随所に見て取れたのだった。

 では、國分が本来のあるべき流れに戻そうとしてこの本を書いたのが昭和27年ということだが、それから約66年が経った平成30年の今、実態はどうなっているのかというと、残念ながら國分の願いどおりになっているとは言い難い。それは、例えば、賢治は「聖人・君子」ではなかったと主張することに対しては昨今でも強い反撥があるということとか、私個人としても、『本統の賢治と本当の露』を出版したならば、「とある組織」がムキになって陰に陽に本来ならばあり得ない仕打ち私にしてくるということからも容易に窺えるからである。
 しかしながら、物事はそう簡単には変わらないというのも世の常であり、それは私も心得ているので、ここは慌てず焦らず地道に今後も取り組んでゆきたい。なぜならば、田舎の70過ぎの老いぼれがなんか妙なことをほざいているなと、その「ある組織」は冷笑しておればいいものを、その「組織」の代表者が私に対して個人攻撃してくるわけだから、「仮説検証型研究」という手法に依って、
 ㈠ 「独居自炊」とは言い切れない 7
 ㈡ 「羅須地人協会時代」の上京について 25
 ㈢ 「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」賢治 43
 ㈣ 誤認「昭和二年は非常な寒い氣候…ひどい凶作」 65
 ㈤ 賢治の稲作指導法の限界と実態 69
 ㈥ 「下根子桜」撤退と「陸軍大演習」 84
 ㈦ 「聖女のさまして近づけるもの」は露に非ず 91
ということなどを実証し、従来の幾つかの定説を覆している私の『本統の賢治と本当の露』は実はかなり真相に迫っていて、新たな真実を明らかにしてる蓋然性が大だということを逆にその「個人攻撃」が教えてくれているからである。

 一方、賢治の童話「雪渡り」に関して、國分はいみじくも、
 わたしたちは、賢治からこういう美しい自然に対するおどろきの心を、やっぱり見習ってよいとおもいます。賢治のあたたかい人間性とすみきった目というものには、何をわすれてもとびこんでいってよいとおもいます。
            〈114p〉
と言っているではないか。ちなみに私も、子どもの頃はよく「雪渡り」をした。しかも、その行為は力学上からいって大人にはできないものであり、子どもだからこそできることだいうことに気付いた今、國分の先の「想い」はいずれそう遠くない時期に実現されるということを私は確信する。
 れは、先頃、先輩から『ガリレオ』の伝記を頂戴して読んだこともあったので、なおさらにである。まず第一に、「66年が経った今、実態はどうかというと、残念ながら國分の願いどおりになっているとは言い難い」ということと、ガリレオが世に「真理」を知らしめるのは容易なことではなかったということとは同じような構造をしているということを、そして第二に、やがてはガリレオの苦労と努力が稔ってそれが真理として世の中から受け容れられていったのと同様に、國分の願いも実現するであろうことを、私はその伝記から教わったからだ。

 そう、答えは風に吹かれている、とボブディランは歌っているのだ。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月231日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
 そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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