JR福知山線事故の公述人応募、前社長が直接要求 10月15日23時27分配信 読売新聞
JR福知山線脱線事故の意見聴取会の前に、JR西日本が有識者4人に同社側の公述人になるよう求めていた問題で、同社の意向を受けて応募したものの、落選した国鉄OB2人は、JR西の山崎正夫前社長から直接、応募するよう求められたことが15日、分かった。
また、書類の一部はJR西側が用意していたことも明らかになった。
落選した日本鉄道運転協会会長の小野純朗氏と、元秋田内陸縦貫鉄道専務の伊多波美智夫氏が同日、読売新聞の取材に明らかにした。
小野氏は、国鉄運転局時代の山崎前社長の上司で、山崎前社長から、「今回の事故で、過密ダイヤや列車の遅れが(事故の)原因だと言われるのは、鉄道界にとってよくない」と言われたという。小野氏は、同社の依頼がなくても個人的に応募するつもりだったといい、「福知山線のダイヤは過密ではないなどという一般論を述べるつもりだった」とした上で、「依頼を受けたのは、遺族感情を傷つけるという点で不適切だった」と話した。
一方、伊多波氏によると、公述人への応募や公述内容の書類は、すべてJR西側が用意したという。しかし、「自分の意見を話し、その内容をJR側がまとめた」と説明。JR西から10万円の謝礼を受け取ったことについては、「コンサルタント料と思っていた」と語った。JR西は「事実関係を調査中」としている。
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同社は、事故現場カーブで列車が急激に減速しなければならないことがわかるグラフを聴取会で取り上げないよう強く求めたという。
JR西側が働きかけたのは、永瀬和彦・金沢工業大客員教授。JR系列の研究開発機関「鉄道総合技術研究所」のOBで、当時は、JR西の安全諮問委員会委員長を務めていた。同社は、永瀬氏のほかにも3人に公述人になるよう要請し、うち公述人から漏れた旧国鉄OBら2人には聴取会後、申請資料づくりの手間賃として10万円ずつ謝礼を支払ったという。
調査委員会による事故調査は、調査する側と当事者とが、「再発防止」を共通の目的に、真相究明に協力しあう理念で支えられている。この幹部は「事故の当事者が現金を用意してまで自社に有利な方向に事実をゆがめようとしていたのか」と受け止めた。
当時、有識者として公述人を務めた安部誠治・関西大教授(公益事業論)は、「初めて聞く話ばかりで、そこまでやるのかとあきれた」と驚いた様子だ。「JR西は事故後、社員が時間をかけて遺族をまわり、ようやく対話が醸成さえてきたところだったのに、今回の件で事故の日に戻ったように信頼は崩れてしまった」と話した。
(朝日新聞 2009.10.15 夕刊)
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山崎正夫前社長の一存で働きかけたとは考えにくく、誰かが提案(首謀)し、決定し、トップシークレットとして秘密裏に実行したことが今になってバレてしまったわけだ。遺族を含めた乗客を第一にしているのではなく、保身に走っていたとは、呆れるのを通り越して、言葉を失う。
良心も誠意もすべて反故にできるほどの経営姿勢がそこにあった。どうすればそんな心の持ち主になれるのか。そんな恐ろしい話し合いを、どのような心情で練って実行したのか。
犠牲者、遺族をはじめ、国民をここまで欺く企業は、顧客から見捨てられ、経営破綻して当然であるが、公共交通機関であることが、潰れるわけではないという驕りを生んでいるのだとしたら、許せない話だ。ここにきて遺族は改めて裏切られた思いで、悔しさ、やりきれなさでいっぱいだろう。
こんなとき、JR西日本はTVコマーシャルなど自粛すべきだろうし、お詫びの意を込めて、当面の間、運賃を大幅値下げするとか、無料化するといった行動をとってはどうだろう。それで許されるものではないが、公共交通機関をストップできない以上、休業できないのであればそれに匹敵する方法で当座、反省の意を示してもいいのではないだろうか。
JR福知山線脱線事故の意見聴取会の前に、JR西日本が有識者4人に同社側の公述人になるよう求めていた問題で、同社の意向を受けて応募したものの、落選した国鉄OB2人は、JR西の山崎正夫前社長から直接、応募するよう求められたことが15日、分かった。
また、書類の一部はJR西側が用意していたことも明らかになった。
落選した日本鉄道運転協会会長の小野純朗氏と、元秋田内陸縦貫鉄道専務の伊多波美智夫氏が同日、読売新聞の取材に明らかにした。
小野氏は、国鉄運転局時代の山崎前社長の上司で、山崎前社長から、「今回の事故で、過密ダイヤや列車の遅れが(事故の)原因だと言われるのは、鉄道界にとってよくない」と言われたという。小野氏は、同社の依頼がなくても個人的に応募するつもりだったといい、「福知山線のダイヤは過密ではないなどという一般論を述べるつもりだった」とした上で、「依頼を受けたのは、遺族感情を傷つけるという点で不適切だった」と話した。
一方、伊多波氏によると、公述人への応募や公述内容の書類は、すべてJR西側が用意したという。しかし、「自分の意見を話し、その内容をJR側がまとめた」と説明。JR西から10万円の謝礼を受け取ったことについては、「コンサルタント料と思っていた」と語った。JR西は「事実関係を調査中」としている。
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同社は、事故現場カーブで列車が急激に減速しなければならないことがわかるグラフを聴取会で取り上げないよう強く求めたという。
JR西側が働きかけたのは、永瀬和彦・金沢工業大客員教授。JR系列の研究開発機関「鉄道総合技術研究所」のOBで、当時は、JR西の安全諮問委員会委員長を務めていた。同社は、永瀬氏のほかにも3人に公述人になるよう要請し、うち公述人から漏れた旧国鉄OBら2人には聴取会後、申請資料づくりの手間賃として10万円ずつ謝礼を支払ったという。
調査委員会による事故調査は、調査する側と当事者とが、「再発防止」を共通の目的に、真相究明に協力しあう理念で支えられている。この幹部は「事故の当事者が現金を用意してまで自社に有利な方向に事実をゆがめようとしていたのか」と受け止めた。
当時、有識者として公述人を務めた安部誠治・関西大教授(公益事業論)は、「初めて聞く話ばかりで、そこまでやるのかとあきれた」と驚いた様子だ。「JR西は事故後、社員が時間をかけて遺族をまわり、ようやく対話が醸成さえてきたところだったのに、今回の件で事故の日に戻ったように信頼は崩れてしまった」と話した。
(朝日新聞 2009.10.15 夕刊)
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山崎正夫前社長の一存で働きかけたとは考えにくく、誰かが提案(首謀)し、決定し、トップシークレットとして秘密裏に実行したことが今になってバレてしまったわけだ。遺族を含めた乗客を第一にしているのではなく、保身に走っていたとは、呆れるのを通り越して、言葉を失う。
良心も誠意もすべて反故にできるほどの経営姿勢がそこにあった。どうすればそんな心の持ち主になれるのか。そんな恐ろしい話し合いを、どのような心情で練って実行したのか。
犠牲者、遺族をはじめ、国民をここまで欺く企業は、顧客から見捨てられ、経営破綻して当然であるが、公共交通機関であることが、潰れるわけではないという驕りを生んでいるのだとしたら、許せない話だ。ここにきて遺族は改めて裏切られた思いで、悔しさ、やりきれなさでいっぱいだろう。
こんなとき、JR西日本はTVコマーシャルなど自粛すべきだろうし、お詫びの意を込めて、当面の間、運賃を大幅値下げするとか、無料化するといった行動をとってはどうだろう。それで許されるものではないが、公共交通機関をストップできない以上、休業できないのであればそれに匹敵する方法で当座、反省の意を示してもいいのではないだろうか。