何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

事故がなくならない理由

2012-09-26 21:02:13 | Book Reviews
「事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴 芳賀繁・著、PHP新書、2012年10月2日

p.5 安全対策がどのような成果を上げるのか、あるいは上げないのかを決めるのは、その安全対策によって人間の行動がどのように変化するのかにかかっている。これは工学の問題ではなく心理学の問題なのである。

p.33 気の低いところは高いところより安全である。だからといって、事故が起きにくい場所ではないということだ。木の高さを低くするような安全対策をとったからといって、事故が減るとは限らない。事故は、外にあるリスク(木の高さ)と人間の行動(心理的反応を含む)の相互作用によって起きるのである。

p.36 運転が下手だから事故を起こすのではない。下手は下手なりの運転をすれば事故を起こさないということなのだ。

p.37 事故を起こさないためにある程度の運転技能が必要なことは私も否定しない。しかし、このタイプの事故、すなわち、交通環境がドライバーの対処能力を超えてしまったときに起こる事故を防止するためには、ドライバー側の対処能力を高めるよりも、交通環境の負荷を低める対策のほうが効果的であると思われる。

p.52-3 事故や病気や失敗のリスクを減らすはずの対策や訓練が、結果として事故や病気や失敗のリスクを低下させられないのはなぜか。それは、肝心の人間がリスクを増やす方向に行動を変化させるからである。この現象を「リスク補償」という。
 リスク補償行動とは、低下したリスクを埋め合わせるように行動が変化し、元のリスク水準に戻してしまうことをいう。
 リスク補償という現象は、安全システムを開発している技術者にとって、悩ましい問題である。せっかく苦労して安全性を高める装置を作っても、それを使う人間が安全性を引き上げてしまうのだから。

p.58 リスクをとることは利益につながるので、人々は事故や病気のリスクをある程度受け入れている。その「程度」がリスク目標水準である。安全対策で事故が減った場合、人々はリスクが低下したと感じ、リスクを目標水準まで引き上げようとする。なぜならベネフィットが大きくなるからである。したがって、リスク目標水準を変えるような対策でない限り、いかなる安全対策も、短期的には成功するかもしれないが、長期的には事故率は元の水準に戻ってしまうと予測する。

 この程度のリスクはやむをえないと思っているうちは、その程度の高さを許容しているうちは、事故は減らないということか。これまで仕方ないと受け入れてきた事故に対し、それではダメだと理解し、取り組むようにならないと現状は変わらないという意だろう。




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