久しぶりの東京である。
鉄道の乗り潰し旅では何度も訪れている東京ではあるが、乗換に利用するだけで、
中々降りる機会には恵まれてはいなかったので久々と言うことだ。
現役時代には東京駅で下車しても、殆どが八重洲口に降り立って用向きに真っ直
ぐで、滅多に丸の内口に出ることは無かった。
この日も新幹線を降り、一旦は八重洲口に向かいかけたものの、途中で踵を返して
みた。駅舎が綺麗になったとの、随分前の報道を俄かに思い出し、この機会に見て
おこうと思ったのだ。
世界で最初の高速鉄道として東海道新幹線が開通したのは、東京オリンピック
が始まる直前の昭和39年10月1日のことであった。
その後国内には順次新幹線網が整備され、半世紀余りの間に北海道から九州ま
でが標準軌の鉄路で繋がっている。
便利になり、国内が随分と狭くなった印象だ。岡山・東京間が僅か200分程である。
そんな時代に何を血迷うたのか、東海道を歩いてみようと思い立った。
四国八十八カ所を歩き、その後京都羅城門から古の人々が目指した高野路を歩き、
高野山詣でを終え、その後は腑抜け状態になっていた。
人の歩くスピードでは200分ならせいぜい十数キロに過ぎないが、新幹線は700
キロもの距離を駆け抜ける。
こんな時代だからこそ、ゆっくりのんびり歩いてみたい、などとしかつめらしい話で
はないが、格段の理由もなく唯々歩いてみたいだけである。
この日は、旧東海道歩きの第一日目、スタート地点である日本橋に向かう前に、
東京駅の丸の内口に降り立ってみた。(続)
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