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attempted murder or negligent homicide?―the case of Gennai Hiraga 2

2014-07-16 | bookshelf
台東区橋場にある源内の墓

 源内先生が引き起こした刃傷沙汰の直接原因は、どうやら明確にすることは無理だとわかりました。
 現在有力な2つの説や馬琴が聞いたという巷の説の共通項を挙げてみましょう。
・被害者は男2人。
・2人共、源内宅に宿泊していた。
・2人の近くに、源内が大事だと思っていた紙類があった。
・2人は源内から言われもない事で激怒され、突然斬りつけられた。
・1人は負傷のみで逃げおおせた。
・もう一人は重傷を負い、逃げた後死亡した。
噂では、この時源内先生は気が違っていた、と言われていて、現代でもそれが定説になっています。

 源内先生の精神障害を裏付けするものとして、事件の1,2か月前にあった出来事が信じられています。江戸で書かれた『鳩渓遺事』に、「ある人が源内宅を訪れ、揮毫を頼んだところ、源内は少し考えて、我れ近頃甚だ面白き絵の趣向浮かびたれば早速に画きて進ずべし、と言ってすらすらと描いた絵を見ると、岩の上に1人いる者がおしっこをしていて、下にそれを受けて坐して涙している人がいる図で、源内は描き終えて得意然としていた。画意不明だったが、源内は常に人の意表をつくことをしていたから、これも深い寓意があるのだと思って持って帰って考えたが一向にわからなかった。さては狂乱の兆しが既に表れたものだったのか。」という逸話が載っているのです。
 源内の奇行はこれだけではなく、当時幽霊屋敷として有名だった屋敷を買って住んだ、という事実があります。神田橋本町にあったその凶宅で、源内は発狂したとしか思えない事件を起こしたのでした。
 しかし、事件前後の源内に、精神を病んだ者のような狂気は感じられません。些細なことで刀を抜くような精神状態の人の家に、誰が宿泊するでしょうか。高松藩で信じられている木村黙老説は、「某諸侯の別荘の修理の見積書に関係することで、請け負った土木工の見積もりが高額だったため源内に見てもらった。源内は自分ならもっと安くできると言った為彼に任されたので、土木工と争論になった。役人が間に入って、修理は両人がやることに落着した。それで源内は、役人と土木工を自宅に招いて一席設け酒を飲んだ。土木工が、どうやったらそんなに安くできるのかと聞いたので、源内は隠すこともないと書いたものを見せて詳しく説明した。説明を聞いて土木工は感服した。酒宴が長引いて役人は先に帰り、残った土木工は泥酔して眠ってしまった。源内もしたたか酔って寝てしまったが、明け方目が覚めて辺りを見たら、見積書がなく、あちこち探したが見つからなかった。」と書いていて、後は江戸での説と同じ結末です。
 さて、黙老説からは、源内は発狂したというより、酔いが抜けてなく起き抜けだったこともあり、冷静な判断ができない状態だったように見受けられます。精神を病んでいる者に、プロの職人を感服させるような説明ができるでしょうか。
 奇異な絵にしてみても、実際絵が残っていないし、どこの誰だとも判明していないので、信憑性に欠けます。私は、この図の説明を読んで「小便小僧」を連想しました。調べてみたら、小便小僧は12世紀のブリュッセルが起源でした。ブリュッセルの歴史を見ると、なんとネーデルラントと運命共同体だったとわかりました。ネーデルラント連邦共和国=オランダです。蘭学者でもあった源内が、小便小僧の像(作られたのは1619年)か絵、或は物語を知っていても不思議はないでしょう。源内は、まだ日本人が誰も知らないオランダの面白い話を、奇をてらって描いたと考えられないでしょうか。源内の性格からして、中国の故事に習ったとかいうよりは、可能性ありそうに思えます。図の説明から、小便小僧はジュリアン坊やの方ではなくて、ブラバント公ゴドフロワ2世だったのではないでしょうか。
 そして、西洋かぶれの源内先生のことだから、凶宅の怪異だの迷信などには囚われない性格で、幽霊屋敷を買ったのは単に住んでいた家が粗末だったため、広い家が安値で売られていたから買っただけ、と思われます。幽霊屋敷と云われるような家に、人は余り近づきたがらないでしょうから、人の出入りが激しかった以前の住居より、訪問者は減ったことでしょう。山師呼ばわりされ、田沼意次からも疎んじられて失意に沈んでいた源内は、自分を利用するだけに寄って来る人間を避けたかったのだと思います。

しかし、事件はこの屋敷に移り住んで数か月後に起こっているのは、事実です。
 
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